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二つ名

本名「まっくろおとこ」……もとい、「間黒男」。通称あるいは二つ名が「ブラック・ジャック」。枕詞は「無免許医」「天才外科医」。

「ブラック・ジャック」という名前については、手塚治虫自身が「金属製(昔は皮製だった)のコップのことですが、海賊の旗----あのがい骨をぶっちがえたマーク----の意味もあります。お金をふんだくり、荒っぽくメスで切りきざむというわけで、海賊に見立てたのです」と、命名の由来を語っている(少年チャンピオンコミックスのカバー)。このことから、ドクター・キリコの名前も切子細工のグラスに由来するのだろうという考察もなされているわけで、いかにも納得できることである。

『BJ』の登場人物の命名についてはたくさんの考察がなされていて、もはや私などには考える余地がない。なのに、何故今さら名前かというと、『BJ火の鳥編』においてキリコがBJの本名を知らなかったという設定が妙にツボだったからである。非っ常~にそそられたのである(笑)。名前とか呼びかけとか二人称とかの、いわゆる相手をどう呼ぶかということには、お互いの関係の深さとか尊敬・軽蔑等の好悪とか無意識のうちに取りたい距離感などが出るものだと思う。また、日本語の場合は敬語というものがあって口調そのものにもそれが出る。そこで今回は、BJを取り巻く人々が彼をどう呼ぶか、どんな口調で話しているか、また逆に、BJが彼らをどう呼ぶかどんな口調で話しているかを調べてみる。たいして意味はない(笑)。

●ピノコ
 BJに対しては「先生(ちぇんちぇい)」。口調は対等。ときには「~しなちゃい」と命令も(笑)。

・対ピノコ
 「ピノコ」「おまえ」。口調は対等。

●ドクター・キリコ
 BJに対しては「ブラック・ジャック」「(ブラック・ジャック)先生」「きみ」「おまえさん」「おまえ」。口調は対等だが、ちょっと見下したふうもあり。

・対キリコ
 「(ドクター・)キリコ」「キリコ先生」「おまえさん」「おまえ」「大将」。対等+喧嘩腰。一人称が「おれ」になる。

●本間丈太郎
 BJに対しては「きみ」。爆発事故の手術の際には「クロオくん」と呼んで皮膚の提供者を募っている。教え諭すような口調。

・対本間丈太郎
 「(本間)先生」。口調は丁寧な尊敬語。

●如月めぐみ
 BJに対しては「(ブラック・ジャック)先生」「あなた」。口調は敬語。第三者に話すときは「あのかた」。

・対如月めぐみ
 「(如月)先生」「きみ」。口調は……複雑(笑)。丁寧語になったり親しげになったり。医局員時代は「めぐみさん」と呼んで対等な口調。心中で呼びかけるときには「めぐみ」。

●ブラック・クイーン
 BJに対しては「(ブラック・ジャック)先生」「あなた」。丁寧語。ただし酔っ払っているときはその限りにあらず。

・対ブラック・クイーン
 「あなた」。「です・ます」調が基本だが、時々崩れる。

●手塚医師
 BJに対しては「ブラック・ジャック」「きみ」。対等。第三者に話すときは「無免許の名医」。

・対手塚医師
 「きみ」「おまえさん」。対等。一人称は「おれ」。

●辰巳先生
 BJに対しては「ブラック・ジャック」「きみ」。対等。

・対辰巳先生
 「きみ」「おまえさん」。対等。一人称は「おれ」。

●白拍子泰彦
 BJに対しては「あんた」「ブラック・ジャック先生(←手術を頼むときだけ)」。口調は対等で非難調。

・対白拍子
 「おまえさん」「大先生(←目一杯の皮肉である)」。口調は対等……ぞんざいと言ったほうがよいか。

●琵琶丸
 BJに対しては「先生」「おまえさん」。口調は丁寧だが、最初はちょいと見下した感じだった。

・対琵琶丸
 「琵琶丸」「あんた」。対等。

●間久部緑郎
 BJに対しては「ブラック・ジャック」「きみ」。過去には「黒男」。対等。

・対間久部緑郎
 「間久部」「きみ」「おまえさん」。対等。一人称は「おれ」。

●タカシ
 BJに対しては「クロちゃん」。対等。

・対タカシ
 「タカシ」。対等。

●友引警部
 BJに対しては「ブラック・ジャック(先生)」「おまえ」「モグリ医者」。口調は横柄。

・対友引警部
 「おまえさん」。口調は慇懃無礼というかぞんざいというか(笑)。

せっかく「間黒男」という本名を設定した割りには、彼を本名で呼ぶ人物は思いのほか少ない。過去話に出てくる間久部とタカシと本間先生、それと当然だがBJの父親だけだ。あとは「再会」の中で研修医時代に「間(はざま)」と呼ばれている程度。大学時代の友人や恩師も残らず「ブラック・ジャック(くん)」と呼んでいる。せめて如月先生は「間先生」と呼んでほしいな、と思わないでもないが。

如月先生とBJの会話はこれまたツボである。如月先生の口調は一貫しているが、BJのほうがコロコロ変わる。どういう具合に話せばよいのか自分でも判らないというふうで、BJの戸惑いと興奮が察せられる。「ブラック・ジャック」を装ってはいるのだが、ともすれば医局員「間黒男」に戻ってしまっているような。う~ん、良いな~♪

BJ本人の意識の中では「間黒男」と「ブラック・ジャック」は明確に分かれているのではないかと思う。黒い医者になるきっかけが何だったのかは判らないが、正規の医者への道を踏み外して生きていくことを決意したときから「間黒男」は「ブラック・ジャック」に変貌したのだろう。「間黒男」にできないことでも「ブラック・ジャック」ならできる、そんな意識があるのではないかと思う。ドクター・キリコと太刀打ちできるのは、間違いなく「ブラック・ジャック」の方である。だからキリコには本名を教えていなかったのかな~、などと想像を逞しゅうしたのでありました。(「間黒男」という本名自体が後付けだろう、というツッコミは無しでお願いいたします。笑)

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「ブラック・ジャック」カテゴリの記事

コメント

わかばさんこんにちは。
私も普段「私」って言うBJがたまに「おれ」って言ったりするのに思わずにやけてしまいます^^@
>大学時代の友人や恩師も残らず「ブラック・ジャック(くん)」と呼んでいる。
そうなんですよね!たしか昔の知り合いに「今はブラックジャックと呼んでくれ」とか言ったセリフがあったように思うのですが、そんなふうにみんなに言ってるのでしょうか?
>どういう具合に話せばよいのか自分でも判らないというふうで、BJの戸惑いと興奮が察せられる。
めぐみさんに対するBJの態度は、いつまでも冷静ではいられない、という風でBJにもこういう部分があるんだね~と・・微笑ましい?というかなんというかv
>心中で呼びかけるときには「めぐみ」。
ここがどきっとしたもんです^^@
>「間黒男」にできないことでも「ブラック・ジャック」ならできる
そうですね!「ブラック・ジャック」は対人フル装備、「天才」で「世界一」、なんでもできる、という強烈な自己暗示も入っているように思います。
弱い部分は「間黒男」として切捨てた、という感じでしょうか。
完全な「ブラックジャック」に「間黒男」が垣間見えるのがまたおもしろいと言いますか・・
なんにしてもいつまでもあきさせない男ですv

投稿: 神無月 | 2007年1月30日 (火) 11時51分

月曜日のBJ語りありがたや。
そしてまたツボな部分をクローズアップされてて嬉しい限りにございまする。BJの言葉遣いってのは太古の昔から萌の水源のひとつだったかと再認識させてもらいましたです。
特に、めぐみさんに対する口調はタマランですなあ♪ 本人目の前にすると敬語(告白前はわざとブッキラボウ)になるクセに、心の中では思い切り呼び捨てで恋人に語りかける口調となんら変わりなし。いやあ良いですなあ♪ 医局員時代に「間先輩」と呼ばれてドキマギしとる黒男くんとかタマランですハイ。めぐみちゃんにも意識してほしいとこでしてハイ。
ゲームはまだできないアホウですが、キリコがBJの本名知らなかったつう描写があるとはいよいよやる気が増すですなあ。お言葉通り、キリコが「間黒男」の存在を知る必要はなかったと同意するわけで。キリコに相対するのはBJだから。考察の内容にえらく納得いたしましたです。間黒男はBJになった、ならざるをえなかったのだと。
やつが生きる目的とは何なのでしょうか。BJとしては困難な手術に挑み一人でも多くを救うことなのでしょうが、間は……仕事(=生き甲斐を含む)に関わる部分をBJとした間は、何を考えているのか想像すると少々コワいものがあるです。
すんません。つい素晴らしいポイント考察に惹かれましてヨケイなことを語りすぎました(謝罪

投稿: トーレス@素晴らしい | 2007年1月30日 (火) 21時58分

神無月さん
こんばんは。いつもありがとうございます。
BJが「おれ」と言うのは、気心知れた友達が相手のときと、凄味を効かせたい相手のときのようですね。辰巳先生相手に「おれ」と言っている先生は、本当に微笑ましいです。にやけます。
「再会」の中で、アキラに向かって「いまはブラック・ジャックって呼んでくれ」と言っていますね。だから昔からの知り合いに対しても、そう言っている可能性は大きいと思います。やっぱり、使い分けているんでしょう。

>ここがどきっとしたもんです^^@
Exactly!! 日頃が日頃だから、先生も普通の男だな~と思えるセリフに出会うと、どきっとしますね。その後、にま~~っと。(^ー^)

>対人フル装備
うまいッ!まさにそんな感じですね。モビルスーツで武装した先生のお姿ががばちょと浮かびました(笑)。
「黒男」と「BJ」を行ったり来たりしている様子は、ファンにとっては堪えられませんね。ピノコに対しては、たいていの場合「黒男」なんじゃないかと思いますが、どうでしょう?(「畸形嚢腫」のときは別ですが。)素のままの先生のような気がします。

投稿: わかば | 2007年1月31日 (水) 00時09分

トーレスさん
いらっしゃいまし。コメントをありがとうございます。ぷぷぷ……(←すんません、納豆巻きを思い出しまして。いやしかし白拍子はいじくり甲斐のあるキャラですなぁ。逆にキリコは何をやらせても堂々と似合ってしまうのがまた……ぷぷぷ。あ、こんなところでコメントを失礼いたしました。汗)

私も「めぐみすと」の一人ですので、この二人のやりとりは何遍読んでもツボであります。何年ぶりかに昔の恋人に出会ったら、たいていの人間もどうしてよいか判らないと思いますが、それがあのBJ先生ですから、もう、もう、どうしてやろうかと思うほど可愛いのであります。めぐみさんの女心も判るし、ここの場面だけでも超一級のメロドラマだと思います。

ゲームは、あれ以来キリコに再会できておりませんが、とても良いですよキリコ先生!是非、楽しみにプレイなさってください。キリコ、BJの本名を知った嬉しさに「クロオ」「クロオ」連発してBJに嫌がられれば良いと思うのですが。

記事には盛り込めませんでしたが、復讐者としての先生はどっちだろうかと考えたりしました。おそらく「黒男」の方じゃないかという気がするのですけれども……。「ブラック・ジャック」なら助けてしまうんでしょう。トーレスさんのご高説を伺いたいところです。

投稿: わかば | 2007年1月31日 (水) 00時29分

おお、やはりソコに触れられましたか。

>復讐者としての先生はどっちだろうかと

ヒトの生き甲斐はそれぞれで、仕事もあれば家族もあるし特に愛娘とか。あるいはその他の活動とか趣味とかさまざまで。「ブラック・ジャック」の生き甲斐が手術とすれば、間の生き甲斐は……
ジツは前回、コワいもんと表現したのは、復讐を生き甲斐とする、のは間だろうと考えたもので。母親と自分をあんな目に合わせたやつらを絶対に許さない、てのは人間の心理としてよく理解できるです。なればこそ天才で常人を超越したBJ(その代わり欠落部分もあるようですが)ではなく、一人の人間としての間黒男かと。この両面があるからBJは複雑で味わい深いのでしょうなあ。そして大なり小なりヒトがもつ二面性を現している、身近な存在つまり魅力的な存在と感じさせるのだと思うです。
ところで復讐劇は2人目で終わってますが……殺してやりたい復讐鬼の心と治さずにはいられないブラック・ジャックとの間で葛藤はあったのでしょうなあ。彼がそうとうジレンマに陥った「2人目がいた」のラストは印象的だったです。

投稿: トーレス | 2007年2月 1日 (木) 23時55分

トーレスさん
重ねてのコメントをありがとうございます。
前の「コワいもん」というのは、やはり復讐ということでよかったのですね。もしかして考え違いをしているかもしれないとビクビクしておりましたが、安堵いたしました。トーレスさんと同意見で嬉しい限りです。

>この両面があるからBJは複雑で味わい深い
まさにそうですね! 先生のインサイドストーリーというのが他のどのエピソードにも劣らず重いのは、「間黒男」と「ブラック・ジャック」のせめぎ合いが描かれているからだと思います。いたって人間的な恨みや悲しみを抱えた「間黒男」と、人の命を救うことに命を懸ける医師としての「ブラック・ジャック」と。

>復讐劇
「二人目がいた」の後の先生が気になりますよね。姥本が死ななかったら本当に復讐をするつもりだったのか? 残りの仇をいったいどうするつもりだったのか? 復讐者としての自分ではなく医者としての自分が勝っていることに気付いてしまったのか? でも悔しいでしょうね、それって……。
いまチラッと頭をかすめたのですが、キリコは「治せない」→「死なせる」ですが、BJは「殺したい」→「治す」なんですよね。どちらも身体を引き裂かれるようなジレンマの結果ですが、ベクトルの向きが正反対だというのが(今さらですが)興味深いです。

復讐者としての先生は、あまりにもテーマが重すぎて今まで避けて通ってきましたが、これまたキリコを絡めると比較として掘り下げられそうな気もします。また、先生が頑なに医師免許を取らないのも、復讐者としての自分を欠格事由としているのではないかという持論もあるのですが。う~む、このテーマは難しいです。……て、なんだかわけのわからないレスになってしまいましたが、トーレスさんのお考えを聞かせていただいて嬉しかったです。ありがとうございました!

投稿: わかば | 2007年2月 2日 (金) 19時01分

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