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続きが気になる

月曜日は『BJ』語り。きょうは、続きが気になるエピソードについて。

『BJ』の各エピソードは、ほとんどが20ページほどの短編だ。たったそれだけのページであれだけのドラマが描けるというのは、本当に凄い構成力だと思う。中でも特筆すべきはラストシーンの巧みさだ。最後のコマで種明かしがあったり、BJの本音が語られたり、大サプライズがあったりする(その最たる例は「ある老婆の思い出」だと思うが、こればかりはバラすわけにはいかない)。

また、そんな素晴らしいラストシーンも、取り立てて大きなコマに描かれているわけではないことが多い。赤塚不二夫の『天才バカボン』でも最後のコマだけは大きかったものだが、『BJ』の場合はラストページとは思えないくらい、その他のページと変わらないコマ割りで淡々と終わったりする。もしもこれと同じストーリーを現代の漫画家が描いたら、これでもかというほど絵柄で劇的に盛り上げるのではないかと思う。しかし原作ではその素っ気なさが却って余韻を生み出すことに成功している、と思うのは私の贔屓目だろうか。

さて、そんなふうに余韻を楽しめる作品が多い中で、非常に緊迫した状況の中で終わるのが「宝島」である。簡単にあらすじを書くと、BJの財産を狙う悪党どもがBJを痛めつけ、どうやら財産が隠されているらしい南海の島へ案内させる。そこで次々とハブに咬まれる悪党たち。BJ自身は免疫血清を打ってあるから大丈夫なのだが、救いを求める彼らにBJは「死ね」と言い放つ。「この空と海と大自然の美しさをわからんやつは……」「生きる値打ちなどない!!」と言うBJの後ろ姿がラストシーン。BJの財産とはこの大自然そのものだったというスケールの大きな作品だ。

ストーリーとしては見事に完結している。地球の環境破壊を憂うBJや手塚治虫の主張がストレートに胸に響く。この後に何かを描き加えることは蛇足以外の何物でもないだろう。しかし……どうしても気になる! この後、BJ先生は彼らを助けたのだろうか? ネット上の評論では「置き去り」「見捨てた」と書いてあるのを2、3見つけた。見殺しはまずいと助けたのではないかという意見も1つ。さて、どっちだろう?

話の筋を追っていくと、まず島へ案内することが決まったときにBJは「いったん家へ帰してくれ……用意がいるんだ……」と言っている。しかし許可されない。船で島へ向かう途中、BJはコートに仕込んだメスやら注射器やらの緊急用の医療具をすべて海に捨てられてしまう。そのときの言葉が「くそ……あれは必要なもんなんだ!!」。これらの言葉から推察するに、BJは悪党どもがハブに咬まれることを最初から予測している。家に帰りたいと言ったのも、逃げるつもりではなくてハブの免疫血清を取りに行くためだったろう。悪党どもにそれを正直に言う必要なんかないとはいえ、この先生はいつも一言足りない(笑)。

つまり、助けるつもりだったのだ。ハム・エッグほかの手下たちはハブに咬まれたことで金より命が惜しくなるのだが、首領格のスカンクだけは「かまれたぐらいで死にゃァしねえっ」「さあハッパをかけろ!!」と、しぶとい。そこでBJが、この島には金なんか無い、自然の美しいこの島を買ったのだからと告げる。そして、その美しさがわからないやつは「死ね」という展開になるわけだ。

銃で脅され最後の最後まで悪党どもの言いなりになってはいるが、全てはBJの思い通りになっている。つまりは、金に血まなこになっている悪党達に、本当の宝というのは金なんかじゃないということを、痛みと死への恐怖の中で思い知らせようということなのだろう。ここまでやらないと分からない奴らだと思ったのだろう。

結局、やっぱり助けるんじゃないかと私は思う。ちなみにハブ毒のことを調べてみたが、ウミヘビやコブラ等が持つ神経毒とは異なり、出血毒であるため、2次的に循環器や腎臓に障害が起こるなどのことがなければ、短時間で死ぬようなことはないらしい。もちろん迅速に免疫血清を打つ必要はあるが。だからBJはあのラストシーンの後、独りで船に乗ってどこかの町へ帰り、血清を入手し、警官とともにまたあの島へ引き返したのではないかと私は想像する。あれだけ酷い目に遭ったのだから「死ね」という言葉までは許せるとしても、目の前で助けを求めている怪我人を放っておくBJというのは、どうも納得がいかないもので……。

続きが気になる話……「報復」もそのひとつ。いろいろあって(あらすじ省略)、日頃BJを目の敵にしている日本医師連盟の会長が自分の息子の手術を獄中のBJに頼むシーンで終わっている。医師免許状で釣ろうとしたがBJは無言で破り捨ててしまう(カッコいいんだこれが!)。万策尽きて最後は「たのむ……わしの息子を救ってくだされ……!」と跪いて涙ながらにBJを拝む会長。

これもたぶん助けたのだろうと思う。TVアニメでは1億円だかで請け負っていたが、私もそれが正解ではないかと思う(5億円だったかな? いずれにせよ私にとっては天文学的な数字だったので忘れた)。この解決法ならBJの信念と意地も通せるし、総理大臣でさえ釈放させられなかったBJが翌週には大手を振って外を出歩いていることに説明もつく。むしろ心配なのは無免許医に手術をさせた会長の立場の方なのだが、どうやら解任されることもなかったらしく、後の「フィルムは二つあった」でもネチネチとBJをイビッて元気なところを見せている。このオヤジは本当にもうッ!!

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・『MW』が玉木宏・山田孝之主演で映画化(来春公開予定)されるそうで。どっちが結城美知夫? どっちにしても、女性客狙いの匂いがぷんぷん(笑)。

・青い術衣を着た外科医。腕を肘から上げて手のひらを自分に向けるポーズを取っているところへ、フルートだの鮭だのを乗せる助手。こんなCMを見たのだが、これは何のCM? 演じているのは長瀬智也。私の脳内BJ先生は彼に似ているので、なんか感激……。
 あった! これだ! 隣はジンベエか?(蹴)

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「ブラック・ジャック」カテゴリの記事

コメント

こんにちは、
いつもBJ語り楽しみにしています。

うーん、やっぱり先生は悪党を助けちゃうんでしょうね。ハブ毒は短時間では死なないんですか・・・なるほど。先生だったら免疫血清を手に入れても、苦しんでいる彼らを放置してぎりぎりのところで治療をはじめそう。うふふ。

ちなみに私の脳内BJは若き日のジミー・ペイジ氏です。「The Ocean」での黒いコスチュームをみて思いつきました。

投稿: とんと | 2008年4月29日 (火) 11時28分

とんとさん
はじめまして、いらっしゃいませ。m(_ _)m
『BJ』語りを楽しみにしてくださっているとのこと、ありがとうございます! これからも頑張りますので、よろしくお願いいたします。

>ぎりぎりのところで治療をはじめそう。うふふ。
うわぁ怖い(笑)。お医者を敵に回すもんじゃありませんね。でもあれだけ酷い目に遭わされたのだから、仕返ししたくなる気持ちもわかります。傷口にカラシも塗ってやれ先生!

>ジミー・ペイジ氏
おお! お金が好きなところもピッタリかもしれませんね。……って、ペイジ氏に失礼かもしれませんが、なにしろ『エロイカより愛をこめて』のジェームズ君のモデルになったくらいの人ですもんね。でも、若かりし日のジミー・ペイジはカッコよかったですね~。

コメントありがとうございました~♪

投稿: わかば | 2008年4月29日 (火) 22時40分

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