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『BJ』キャラを記号として読む

手塚治虫は「マンガは記号だ」と言っていたそうだ。例えば、○を描いて中に2つ点を並べれば人間の顔に見える。口をへの字に描けば不機嫌そうに見える。目尻を吊り上げれば怒っているように見える。またそれらを反対にすれば笑っているように見える。目から滴を垂らせば泣き顔になる。日常使う言語が異なっていても、マンガの表現は万国共通で判り合える。

また、作画上だけでなく、手塚治虫はキャラクター自体に記号としての意味を持たせていることがある。「ブタナギ」なんていう正体不明の生物は、ストーリーにはまったく関係なく笑いの場面にだけ突如現れるキャラだ。ただコマの隅で「ハハハハハ」と笑うだけ。これは「笑い」に特化されたキャラだが、他にもほとんど「おむかえでごんす」しか言わない「スパイダー」や、「ホーサヨカ」が決まり文句の「ロロールル」、決め台詞は持っていないが常連の「ヒョウタンツギ」など特異なキャラがいる。これらのキャラは突然出てくるというだけで不条理な笑いを呼び起こし、加えてストーリー展開の上ではガス抜きの意味を持つ記号と言えるだろう。

ところで、手塚治虫は「スター・システム」を採用している。自分が生み出したキャラを俳優に見立てて、いろんな作品に登場させるのである。ヒゲオヤジやアセチレン・ランプや、更には手塚自身までもが様々な作品で様々な役柄を演じているという構図だ。善玉悪玉両方を演じ分けられる名優も多い中で、ハム・エッグとスカンク草井だけは悪役に徹している。ハムが小悪党ならスカンクは何をするかわからない危険なワルという違いはあるが、この2人が出てくれば悪人と見てまず間違いない。手塚マンガを読んでいる者には説明不要。悪役という記号として機能しているのである。(私の好きなランプ氏も元々はギャングの親分的悪役だったが、『BJ』の中ではちょっとワルくて侠気のあるオヤジという渋い役が多いので、ここでは悪人にカウントしなかった。)

さてそこで、『BJ』の登場人物を記号論的に見るとどうなるか。以下、勝手な自己流解釈なので、読み流してくださることを願う。思いついた順に挙げてみる。

・ドクター・キリコ
一番端的にわかるのは、ドクター・キリコに付与された「死」の記号だろう。「生」の記号であるBJとの関係はまさに+と-、1本の棒磁石だ。一方の磁気がなくなれば他方の磁気も消滅する。同じ重みで存在していなくてはならないもの。BJとはコインの裏表、鏡像でもある。

・本間丈太郎
演じているのが『火の鳥』のメインキャラ猿田彦であることから、生命という神秘に向き合う「人間」そのものという記号が与えられているのではないかと思う。「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんて おこがましいとは思わんかね」とか「きみは人間をロボットに改造するつもりかね」などの台詞には、時空を超えて火の鳥と向き合い続けた彼が悟った「人間」のあり方が表れているように思う。

・ピノコ
ずばり「生命」という記号。存在するだけで価値のあるもの。

・如月めぐみ
女性という性を失った彼女は「プラトニック・ラブ(純愛)」という記号だろう。

・ブラック・クイーン
演じているのが『地球を呑む』のゼフィルスであり、さしものBJまでがクラッとなったということで「魔性の女(Femme fatale)」かとも思うが、恋人の脚を切断できずに苦しむあたりは魔性とも言えず、これは如月めぐみと対にして「性愛」の記号と見る。

・ヨーコ
『しずむ女』に1回出てきたきりのキャラなので記号として確立することに無理があるのは承知だが、なにしろ印象が強いので……。「純粋無垢」の記号と見る。このストーリーの場合、その対立概念が「知能」であるところが悲しいのだが。

・日本医師連盟会長
ずばり「権力」。

・琵琶丸
この人は何だろうなぁ……?「自然」……だろうか。琵琶丸に対する場合のBJは「人為」という記号になるのだろう。

・友引警部
演じるのはランプ氏。なんでもこなせる名優なので決まった記号として見るのは難しいが、「義理人情」とか「潔さ」とかを色濃く感じる。「男の美学」かも?

う~~ん、だんだん記号論と関係なくなったところで、タイムアップ(笑)。これにて御免!

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