« 『赤と黒』に白黒を | トップページ | 図書館という迷宮 »

「時よ止まれ、汝は美しい」

6月9日。トイレに掛かっているカレンダーに「ロックの日」と書いてあった。国民挙げてロックを聴く日なのかと思ったら、ロックセキュリティのほうだった。それは……鍵のアリガタさに感謝する日ということなんだろうか? 気持ちが伝わってくれると嬉しいけど(笑)。いろんな語呂合わせができそうな日だが、手塚ファンにとってはなんといっても「ロック・ホームの日」でしょうね。

手塚作品では主役級の役をこなせるキャラとしてあちこちに顔を出している。詳しくはWikipediaの記述に譲るが、これだけ出ているにもかかわらず、しかし私の記憶では『バンパイヤ』と『火の鳥 未来編』と『アラバスター』の「シーーーーン」という場面くらいしか印象に残っていない(笑)。『ロック冒険記』も読んだはずなのだがサッパリ覚えていないし。器用貧乏で損をしたクチかもしれない。最初の頃は善玉少年スターだったが、『バンパイヤ』以降は一変。シェークスピアの「マクベス」から名前を取った間久部緑郎を名乗るようになってからは、可愛い顔して悪役に徹している。

さて『BJ』の中では、BJの同級生の親友で今や「暗黒街の皇太子」と言われている間久部緑郎としての印象が強い。あとはBQの旦那のロックあたりか。ふむ。親友同士でBQを取り合っていたことになるわけでBQが羨ましい限りだが、それは置いといて……。悪役でないのはこのロック(苗字は鈴木)と、「ナダレ」でノーベル賞を受賞した大江戸博士くらいなもので、残りは全て悪役としての出演ではないかと思う。ちなみに『BJ』という作品に一番最初に登場した人物は彼である。記念すべき第1話「医者はどこだ!」の1コマ目からアクド役で車を暴走させている。見るからに、こりゃあきっと天罰が当たるゾと思わせる放埓振りで、事実そのとおりになるのだが、短期連載の予定だった『BJ』の初っ端に出演を果たしていることから考えると、手塚治虫が大事にしていた思い入れの強いキャラだったのだろうと思う。

私が抱くロックの印象というのは、ナルシストでエゴイスト、である。ロックファンの皆様には大変申し訳ないが、それ以外言いようがない。いや多分ロックファンの方々はそういう彼の性格自体がお好きなのだと思うので、判っていただけると思うが……。過激で自信過剰で人を見下す「俺様」的ワルをやらせたら上手い。一言で言えば誇大妄想狂的なのである。良い男振りなのにそういうワルだというのがロックの最大の魅力なのだろう。だからこそ「地下水道」でのネズミに顔を齧られたロックの無惨さは強烈だった……。

ところで、このロックをも一つ妖しく冷酷にしたのが『MW』の結城美知夫ではないかと思う。同じくナルシストでエゴイストの路線だ。ただロックは女性にだけは優しいんじゃないかというイメージがあるが(『アラバスター』などではそうでもないが、『BJ』に出てくる彼を見るとなんとなくそんな気がする)、結城は自身が両性具有的なところがあるので、男女どっちにも非道が働ける。人の気持ちを弄んで喜んでいるところなどは、ロックよりも更に陰湿だ。ロックはその点「俺様」なので、たいして人の気持ちなど斟酌せず、後先考えずに自分のやりたいことを強引にやってしまうような単純なところがある。また、結城には破滅の道しか残されていないように思われるのに対し、ロックは何度でもワルとしてやり直し(?)がきくような気がする。ワルではあるが、それだけ人間味が残されている人物像として描かれているからなのだろう。ロックが自分がワルであることを誇りに思っている「悪の華」なら、結城は一片の良心をも持たない「悪の権化」だ。

ちなみに結城は自分の余命がいくばくも無いことを知っていて世界中を道連れにしようとするのだが、こういう思考回路を持つ犯罪者に、人はどのように対峙すればよいのだろう。恋人である賀来神父でも止められなかった。彼に必要だったのは神ではなくて悪魔だったから。う~ん、このあたりはモロに『ファウスト』なのだが……。もしも『MW』にBJ先生が出ていたら、「お前さんが死ぬのは勝手だが、人を巻き添えにするのはよせ」とかなんとか言いながら、奇跡のメスさばきで結城を救ってしまうかもしれないと思ったりする。なにしろどんな領域でも外科手術で治してしまう人だから(笑)。それにしても無差別殺人は怖いよね、ということで、ロックの話から完全にズレたところで強制終了(汗)。ロックにはあまり思い入れがないので、いつにも増して内容もなく散漫な文章スミマセン(滝汗)。

(タイトルは『ファウスト』から。これを言うとメフィストフェレスに魂を持って行かれる。しかしここではそんな深い意味はなくて、ナルシストのロックならウットリ鏡を見てこう言ってるんじゃないかと思ったので……(笑)。いや、でも、しかし、手塚作品を理解しようとすればゲーテの『ファウスト』はちゃんと読まねばならないと常々思ってはいるのだ。でも、あんまり面白くないんだなコレが……。)

|

« 『赤と黒』に白黒を | トップページ | 図書館という迷宮 »

「ブラック・ジャック」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/141713/21532500

この記事へのトラックバック一覧です: 「時よ止まれ、汝は美しい」:

« 『赤と黒』に白黒を | トップページ | 図書館という迷宮 »