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♪大好きな雨なのに何故かきょうは冷たくて♪

BJ先生は傘を持っているのだろうか。シリーズ中、彼が傘を差している姿が描かれているのは「めぐり会い」での回想シーン1コマだけのように思う(他にあったら是非ご教示ください!)。アニメ『BJ21』ではたしかアフリカへ行ったときに差していたと記憶しているが、原作ではとんと見覚えがない。

原作に雨や雪のシーンが無いわけではない。「海のストレンジャー」や「未知への挑戦」では車を降りてから建物に入るまでにずぶ濡れになっているし、「山小屋の一夜」では篠つく雨の中を妊婦さんを抱えて山小屋まで登っているし、「老人と木」ではピノコと共に雨に濡れているし、「デカの心臓」では雨の中デカと立ち話をしているし、「デベソの達」では土砂降りの中を達を探しに行くし、「白い正義」では雪が降る中で白拍子先生と立ち話をしているし、「身代わり」でスージーと話をする場面も雪だ。この他にも、まぁこの状況では傘を差すのは無理だというような話はあるのだが、少なくともここに挙げたシーンでは普通の人なら傘を(持っていれば)差す。しかし彼は差さない。

よって、私はBJ先生は傘を持っていないと推測する。患者が危急の場面で雨なんかに構っていられないからとか、移動するのに身軽なほうがよいからとか、あるいは、降らば降れロンリー・ウルフは雨を避けたりしないのサ、というような人物設定の都合上、等々の理由があるのかもしれない。しかし、往診を頼んだ医者が濡れ鼠でやってきたらその家の者は困るだろうなぁ(笑)。玄関から座敷まで拭き掃除をせねばならぬ。てるてる坊主を18個も持ち歩く余裕があるくせに、何故折り畳み傘の1本が持てないのかが不思議だ。きょうはそのあたりのことをグダグダと語ってみる。

さて、先生が唯一傘を差しているシーンのある「めぐり会い」に話を戻そう。この話で、黒男先生は如月めぐみ先生のために傘を買っているようだ。以下、めぐみさんの回想。
「医局でよく夜まで仕事をして 雨のために帰れなくなったとき……おかしなことにいつも 医局のどこかでカサが見つかるのです。やがて妹(注:めぐみさんのこと)にはその主がわかりました。あのかた(注:黒男先生のこと)が 雨になると自分の家からわざわざカサをとどけて そっとおいておくのでした。妹がお礼をいって いっしょに帰りましょうというと ムッとしたようにこれから残業だといって 部屋へはいってしまいました」「そのつど妹は夜道をひとりで帰るのですが じつは百メートルほどはなれて あのかたはいつも妹の身を守るように歩いていたようです」

この述懐を読むと、めぐみさんも結構天然だなと思う。そもそも医局に1本置き傘をしておけばよかったろうに。「いつも」「どこかで」見つかる傘。「いつも」というからには一度や二度のことではなかろう。「やがて」その主がわかるまでにどれくらい時間がかかったのだろう。その間、めぐみさんはその傘をどうしていたのか。翌日にめぐみさんが傘を元あった場所に返しておくと、黒男先生がこっそり回収していたと考えるのが普通だろう。雨が降るたびに1本の傘が2人の間を行ったり来たりすることになるわけだが、しかしそれなら黒男先生はその傘を「自分の家」に持ち帰る必要はないのであって、次の機会まで医局の自分のロッカーあたりに隠しておけばよいはずなのである。

ところが「自分の家からわざわざカサをとどけて」という一文がある。この一文に合致する状況とはいかなるものか。夜になって雨が降ってくる → めぐみさんが帰れなくなる → 黒男いったん自分の家に帰る → めぐみさん用の傘(A)を持って再び医局へ行く → 「どこか」に置く → めぐみさんが見つける → 借りる → めぐみさん「夜道をひとりで帰る」 → じつは黒男が百メートル後方を歩いている → めぐみさん無事帰宅 → 黒男安心してそのまま自宅へ帰る(だろう) → 翌日めぐみさん傘(A)を自宅に置きっぱなしで出勤 → 黒男仕事を抜けて傘(B)を買いに行き自宅に置きに帰る → 黒男一応仕事に戻る → 夜になって雨が降ってくる → めぐみさんがまた帰れなくなる → 黒男仕事なんかおっぽり出していったん自分の家に帰る → めぐみさん用の傘(B)を持って再び医局へ行く → 「どこか」に置く → めぐみさんが見つける……以下、傘がアルファベット降順に変化して無限ループ。

どうもこういう状況しか考えられないのだが、そうするとめぐみさんの自宅にはどんどん傘が増えていく計算になる。片や黒男先生はしょっちゅう傘を補充しておかなくてはならないわけで、きっと最寄りの傘屋では「またあの男が女物の傘を買いにきた」と噂されていたに違いない(笑)。めぐみさんが借りた傘はそのデザインや大きさから間違いなく女物と思われるのだ。しかしこうして見ると、黒男先生はめぐみさんが傘を持って来ているかどうか、今夜雨が降るかどうかが毎日の最大の関心事だったようだ。医局と自宅と傘屋を行ったり来たりするのに大忙しで、仕事どころではなかっただろう。そして、自宅に傘を溜め込んでいるくせにしょっちゅう持っていくのを忘れるめぐみさんは、どう見てもおっちょこちょいだ。あるいは忘れた振りをして今度こそ犯人(?)を突き止めようとしていたのかも?

まぁ傘は1本でも複数本でもよいのだが(笑)、黒男先生にとって夜の雨は嬉しいものだったに違いない。むしろ待ち望んでいたかもしれない。雨の夜に限らず彼はいつもめぐみさんの後をついて帰っていたのだが、雨が降れば彼女は自分が買った傘を差してくれる。もうそれだけで献身と独占のヨロコビを味わっていたんじゃないかと思う。手っ取り早く自分の傘で相合傘……という発想にならないところが、黒男先生のウブで奥手で不器用なところだ。しかし、雨に煙る夜の街路には他の人影もなく、めぐみさんと自分の間を遮るものは何もない。実際は 100mも離れて別々の傘の中にいるけれども、その状況は黒男先生の気持ちの中では立派な相合傘だったに違いない。……ああもう、じれったいやら可愛いやら。くぅ~。o(>_<)o ぷるぷる

ところでこの「傘」というアイテムなのだが、深層心理学では先端が尖ったものの範疇に入り「男性生殖器」の象徴とされているようだ。また夢占い等では「外部の圧力などから、精神的や肉体的に守ってくれるものの象徴」となっている。「男としてあなたを守りたい」という黒男先生の純愛を如実に表す小道具と見ることができそうだ。

さてそこで……。医局員時代(私の計算では26歳当時)には雨が降ればちゃんと人並みに傘を差していた黒男先生が、どうしてその後はずぶ濡れになるぶんでも傘を差すことをやめてしまったのか。そこには何か理由があるはずだ。医局員時代に既に一生分の傘を買ったからもういい……じゃなくて! 彼にとって傘はめぐみさんとの思い出と切り離しては考えられないものなのではなかろうか。彼の意識の中で傘というのは、雨風を防ぐためのものではなくて、めぐみさんへの想いを託すものという認識になっているのではないかしらん? あの雨の夜の思い出を、めぐみさんを独り占めしていたと思えたあの嬉しさを、彼は永遠に「傘」に封印しているのだと考えるのは夢見すぎだろうか? 自分で書いていて照れるナ……(笑)//// 

これは牽強付会の謗りも免れないところだと思うけれども、その後の2人に訪れたあまりにも過酷な運命を考え合わせてみても、この傘のエピソードがBJに何らかの影響を及ぼさなかったとは私には思えないのである。BJは、傘と共に、めぐみさんとの思い出の日々と訣別しようとしたのじゃなかろうか。だから、めぐみさんを忘れられない限り、BJはこのさき一生傘を買うことはないし差すこともないのだろう。逆に言えば、BJが雨に濡れ続けている間は、めぐみさんのことを忘れていないという証になると思う。

ところで、「落としもの」「カプセルをはく男」の扉絵には、BJが横を歩くピノコの上にコートを羽根のように広げて雨を防いでやっている後ろ姿が描かれている。なかなか良いシーンである。夢占いでは「コート」は「自己防衛の表れ」とか。その自分のコートの中にピノコを入れてやる行動からは、ピノコがBJの「自己」と同化するくらい近い存在(文字通り「身内」)になっていることが窺えるのではないかと思う。めぐみさんへの「傘」と比較すると、その相違が興味深い。でもいつも一緒に行動するわけじゃないんだから、ピノコにはちゃんと傘を買ってあげようね、先生。

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コメント

こんにちは

折りたたみ傘をひろげたり、折りたたんだりするのに
てこずっているBJ先生って・・・いやかも・・・

ムッとしたように~、のくだりでは当時幼かった私でも読んでいて「おいおい」とつっこみをいれたものです。

めぐみ先生にばれた後は無限ループ傘地獄から開放されたのでしょうか?

投稿: とんと | 2008年6月 3日 (火) 11時28分

ん〜BJ先生の傘は……。
と、考えていたら、気のせいでしょうか、一人でさしてた場面があったような……。
でも、ん〜。BJフリークのわかばしゃんがないと言ってるし、ぼんやりとしか思い出せないし、きのせいかもです。はい(*´ω`)

投稿: もりびと | 2008年6月 3日 (火) 18時14分

とんとさん
こんにちは。
確かに、颯爽と去っていってほしいときに、折りたたみ傘がなかなか開かなくてモタモタしている先生って嫌ですね。想像して笑ってしまいました。
>「おいおい」
本当は気付いて欲しかったのでしょうが、いざバレたとなるとどうして良いかわからないんでしょうね。どっちにしろ後をついて帰るくせにね(笑)。
>無限ループ傘地獄
う~ん、たぶん終わったんじゃないでしょうか。そろそろめぐみさんの病気も発覚する頃でしょうし……。(涙)

投稿: わかば | 2008年6月 3日 (火) 23時52分

もりびとさん
あわわわ、ありましたかね? 
1例でもあれば、この駄文の後半は削除の憂き目にあいます。orz
発見されましたら、是非ご一報を!

投稿: わかば | 2008年6月 3日 (火) 23時53分

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