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「サギ師志願」

昨日はこの本も買った。何故こんな本を買ったのか、理由は判っていただけると思う(笑)。突然この表紙が目に飛び込んできたのだ。そりゃあ買わざぁなるめぇよ。この傷痕はラテックスを用いた本格的な特殊メイクだそうで、その作り方だとか、BJの「矛盾の多い髪型」をどうするかとかが書かれている。なおご参考までに、BJメイクに関してはほんの数ページしか触れられておりません。写真は7~8枚あるかな。モデルさんはJ'zKという方。

さて、月曜日は『BJ』語り。とは言っても、ここんとこずっと『BJ』関係のお絵描きばかりしていたので、きょうは簡単に、好きなお話を取り上げてみる。

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「カミソリは いったぞ 『サイはふられたのだ』」
「あんた シーザーでしょ」

なんともハードボイルドだが、市井のとぼけた人情噺でもある#94「サギ師志願」。大好きなお話なのである。シリーズ中、最も楽しいお話なんじゃないだろうか。あらすじを簡単に言えば、川崎病を患った少年の父親(丸首ブーン)と町医者の矢武井(ヒゲオヤジ)がBJを騙して3000万円分の手術を無料でさせるというものだが、手術が終わる前から警察に自首の電話をかけて(それをBJに聞かれて)しまうサバサバして豪快な父親も、詐欺行為を画策する一癖あるがお人よしの矢武井も、そして騙されてあっさり身を引くBJも、それぞれのキャラが鮮やかに際立っていて魅力的である。

隆大介がBJを演じた実写版では、少年の父親に大杉漣、町医者に梅津栄というキャスティングで、これまた楽しかった。騙されたことがわかったときの隆BJの憮然とした表情と、警察が来たときのわざとらしい慌てぶりは何度観ても微笑ましかった。原作のセリフをそのまま使ってあるところも嬉しい。

いや、原作全編にわたってこのお話はセリフが良いのだ。少年の両親と矢武井医師のとにかく金に不自由している状況がありありとわかる話しぶりは、本来なら気が滅入るはずのものだが、「やめろ 高い薬なんだっ」とか「そー こうなりゃ医者が医者をだますの」などのセリフで笑わせてくれる。初めに挙げたカミソリ云々という少年の両親の会話もくすぐりが利いている。ちなみにこれは当時「シーザー」というカミソリがあったことからのシャレ(というか、父親の言い間違い)である。いま「シーザー」ってあるのかしら? 見たことないような気がするけど……。また、言うまでもないが「サイはふられたのだ」は、シーザーが反逆者とみなされることを覚悟の上で軍隊を連れてルビコン川を渡ってローマに入ったときの言葉。もう後には引けぬ、という心境を表している。

犯罪者になることを覚悟の上で息子を助けようとした父親と、自分の力量ではどうしようもないが何とか患者を救おうとした矢武井医師の意気に感じて、BJも小芝居を打ってそそくさと矢武井医院を後にする。普段はコマの奥に向かって去っていくことの多いBJだが、このお話では読者のほうに向かって歩いてくる。俯いていて顔は見えないが、たぶん微笑を浮かべているんじゃないかと思う。コツ、コツと靴音も高く、どうやらご機嫌の体である。もう少しこっちまで来てくれたら、照れくさがって逃げようとするのを無理やり捕まえて頭をナデナデしてあげるのになぁ(笑)。

しかしたぶん、BJが一番嬉しいのは、母親(サファイア)を安心させてやれたことだったのではないかと思う。みすぼらしい身なりをしているが、息子が治ると聞かされたときの笑顔は眩しいほどに美しいし、その後床にへたりこんで嬉し泣きをするシーンにはホロリとさせられる。息子を想う母の姿に、BJは自分の母の姿を重ね合わせていたんじゃないかと思う。

最後に。父親が持っている一升瓶のラベルが「大平山」と読める。秋田にそういう銘柄があるようだ。

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