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クマ

『BJ』シリーズには主役級の役どころで2頭の熊が登場する。「クマ」のジンベエと、「一ぴきだけの丘」のタローである。ジンベエは5人もの命を奪った凶暴なクマ、タローは人間に懐いた優しいクマ。タローは北海道産だからエゾヒグマ、ジンベエはおそらくニホンツキノワグマである。(注:ジンベエが北海道以外には生息しないエゾヒグマだとすると、ジンベエを狙うマタギの矢口冬造さんも北海道に住んでいることになり、その妹の夏江(ナッちゃん)も北海道民ということになる。そうなるとナッちゃんと同じ中学に通っていたBJはますますもってどこに住んでたんだアンタ?状態になってしまうので、ここはどうしてもジンベエにはニホンツキノワグマであってもらわないと困るのである。ニホンツキノワグマは北海道にはおらず本州、四国に広く生息している。)きょうは「クマ」について。

「クマ」では、雪深い山中へナッちゃんを訪ねていくBJ先生。ジンベエを仕留めようとする兄・冬造を心配して思い留まらせようとするナッちゃんの相談に乗ろうとしたようだが、ナッちゃんは半年前に町へ行ったきり帰ってきていない。いったいその手紙はいつ届いたものなんだ? それとも、自分抜きで男同士の話をしてくれというナッちゃんの算段だろうか。それにしても、中学時代のガールフレンドの頼みを聞いてやろうとするBJ先生の義理堅いこと(笑)! 

戸口を開けてBJに応対する冬造さん。夏江さんはどこに?と問うBJを無遠慮にジロジロ見ている。どうやら矢口兄妹には両親がいないようで、冬造さんはナッちゃんの親代わりのつもりなのだろう、可愛い妹を訪ねてきた男(BJ)を何者だ?とばかりに品定めしている。そしてどうやらBJ先生は冬造さんのお眼鏡に適ったようで「まあ あがんな」と言ってもらっている。外見はじゅうぶん胡散臭いと思うけどな(笑)。

ナッちゃんから来た手紙を見せると冬造さんは俄かに人懐っこくなる。自分のことが書いてある、と嬉しそうである。仲の良い兄妹のようだ。そしてBJに濁酒を勧め、ジンベエについて語り始める。BJ先生はひたすら聞き役に徹していて、ほとんどセリフがない。冬造さんは人里離れた山中で一人暮らしだから、きっと話し相手がいなくて淋しかったんだろう。「ジンベエをあきらめるってことは おれから人生取りあげるってことだぜ」と言う冬造さんに、BJは説得を諦める。……というか、最初から本当に説得する気があったのかどうかもよくわからない。逆に、ナッちゃんに「お兄さんの生き方を変えるのは無理だ」と言おうとしていたのかもしれない。少なくとも、BJ先生には冬造さんの生き方に共感するところがあったのだろうと思う。

「そこんとこが 夏江は女で わかンねえンだな」。うん、冬造さん、よくわかってらっしゃる。男と女の間の一番深い溝はそれなんじゃないかと私も思う。男って何故か危ない冒険をしたがる生き物なんだよね~。女はそんな男をひたすら心配する。もうちょっと楽で安全な生き方があるだろうに、と思う。そんな冬造と夏江と同じ構図で、ドクター・キリコとユリの兄妹がいる。BJとピノコも同じと言ってよいかもしれない。命懸けで危ない道を行く男達と、ハラハラする女達。埋めようのない溝、男と女の違いだ。

詳しい説明は省くが、ストーリーはこの後かなりとんでもない方向に展開する。おいおい、それはいくらなんでも……と思うのだが、ナッちゃんの文字通り命懸けの行動で、冬造は命を永らえる。冬造さんが真相を知ったときのことは、あまり考えたくない…。 

さてさて、この話の季節は真冬のようだが、読むたびにいつも不思議だった。クマってのは冬眠するんじゃないのだろうか? で、調べてみたら、クマの場合は完全な冬眠ではなく「冬ごもり」というほどのもので、確かにその期間外に出てエサを獲ることはないが、すぐに目覚める程度の浅い眠りらしいのである。ジンベエはというと、眠る気なんぞさらさらないようである(笑)。あるいは、冬造さんの存在がジンベエを寝させないのかもしれない。ジンベエの方も、冬造と闘うことを生きがいとしていたのかも。冬造とジンベエの間には同じオスとして通じ合う、本能的な何かがあったのかも。そしてそれは冬造さんにとって、夏江と通じ合うものより強力なものだったのかもしれない。ヒトだのクマだのという生き物の種類による分類よりは、男と女という2分類のほうが、はるかにしっくりくるものなのかもしれないと思ったりする。

最後に余談だが。「クマ」を初めて読んだとき、私は石川球太の『牙王』を思い出した。ここに出てくる「片目のゴン」は凶暴なエゾヒグマで、馬でも人でも襲って食べてしまう。人々はオオカミと犬の血を引く「キバ」を使ってゴンを仕留めようとするのだが、結局はキバが自分の家族や仲間達とともにゴンを斃す。その死闘が圧巻なのだ。『牙王』が「マガジン」に連載されていたのは昭和41年らしい(私はコミックスになってから読んだのだが)ので、「クマ」に先立つこと10年である。石川球太と手塚治虫はどうやら旧知の間柄のようで(写真)、「クマ」には『牙王』の影響が多少はあるのではないかと思ったりする。ちなみに『牙王』にはおとなしいクマ「タロー」も登場するのである。イヨマンテ(クマ祭り)の捧げ物になってしまうのだが…。

  片目のゴン と ジンベエ

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コメント

くまっくま〜〜♪ くまま〜♪ ヽ(´(ェ)`)ノ

(訳:高熱〜♪ やほほ〜♪)

投稿: もりびと | 2009年1月20日 (火) 22時58分

もりびとさん
くまっくまま、くまくまくっままくま、くま! ヽ(@(ェ)@)ノ
(訳:わかったから、つべこべ言ってないで、寝ろ!)

投稿: わかば | 2009年1月21日 (水) 00時09分

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