リボンの騎士
『BJ』に頻繁に出てくる手塚キャラ(女性)にメルモとサファイアがいる。『BLACK JACK 300 Stars' Encyclopedia』によれば、メルモが7話、サファイアが6話に登場している。サファイアは登場回数ではメルモに及ばないが、主役級の役を当てられることが多く、また連載開始早々の第4話目に登場していることからも手塚治虫の思い入れの深さが窺えるキャラである。
・サファイア登場エピソード
#4 「アナフィラキシー」
#15 「ダーティー・ジャック」
#49 「二つの愛」
#94 「サギ師志願」
増刊「U-18は知っていた」
#212「ある女の場合」
特に印象深いのが「ダーティー・ジャック」と「ある女の場合」の2編だ。
「ダーティー・ジャック」では幼稚園の先生役。園児を引率してバスに乗っていてトンネルの落盤事故に遭うが、子ども達を怖がらせないよう、優しく、そして毅然と事に当たる女性である。最期は差し入れられた医薬品に火が燃え移るのを身を呈して防ぎ、子ども達をBJに託して死んでいく。
「ある女の場合」では浮き沈みの激しい人生を歩む女性役。駅のホームで倒れたところをBJの手術によって一命をとりとめ、その後幸せを掴んだかに見えたがまた没落し……。それでも健康な身体を手に入れた彼女は強く生きていくのであった。
「アナフィラキシー」でも人に向かって発砲するという(緊急事態だったので)思い切った行動に出る看護師を見事に演じているし、男勝りでちょっと気は強いがそこが魅力的……という女性を演じさせたらサファイアの右に出る者はいない。まさに男と女両方の心を持つリボンの騎士の面目躍如である。
で、BJ先生が何故かサファイアにはいつも好意的なのである。「ある女の場合」の手術料がラーメン1杯分とは破格の安さである。プラットホームで倒れたのがサファイアでなくスカンク草井あたりだったら、見て見ぬふりをするか(をいをい)、5千万円ローンで払え、くらいは言うはずだ。美人は得だなあ(笑)! サファイアの屋敷での、手術料を払う、いらない、の応酬もなんだか楽しそうだし、BJ先生は自分に対等に向かってくる相手がお好みなんじゃないかと思う。その一途さとか懸命さとかその底にある譲れない信念とかプライドとか、悪く言えば頑固さとか、そういう部分で相対することのできる数少ない女性キャラであるように思う、サファイアは。
そしてこのサファイアの性格と非常によく似ていると思うのがピノコである。BJと対等に物を言い、一途で頑固で、優しい。逆に言えばサファイアがピノコのポジションにいてもBJとは上手くやっていけそうな気がするが、それだとサファイアが妙齢の美女なのですぐにBJと恋愛関係になりそうな気がして……、だからこれは却下。やっぱり孤独な影をまとう男であるところのBJの傍にいても良いのは「小さい」ピノコだけだ。話が逸れたが、サファイアとピノコは似ていると思うのである。手塚治虫が生み出した最大の女性キャラ・サファイアのキャラクターを踏襲しているのがピノコなのかもしれないと思う。ピノコの髪やスカートに「これでもか」とばかりにたくさんついているリボンは、その目印なのではないのかな。
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コメント
手塚先生が、どの作品にもなんらかの形で他作品のキャラを登場させるのは、キャラへの愛情が深いからだ。
と、思っていましたが、その他にも、記号としての意味合いがあったのかもしれないなあと思いました。
男勝りな正義のヒロインならサファイア、カタブツで昔ながらの人情家にはヒゲオヤジ、なんて。
投稿: もりびと | 2009年1月13日 (火) 01時20分
もりびとさん
手塚治虫がスターシステムを採用しているのは、キャラに対する愛情もさることながら、説明が省ける利点があるのだと思います。アトムが出てくれば勇敢な少年、ハム・エッグが出てくれば曲者と思って間違いない、など。おっしゃるとおり、キャラ自体が記号なのだと思います。
だから、小物にも記号としての意味があるのではないかと、ピノコのリボンをそんなふうに考えてみました。
投稿: わかば | 2009年1月15日 (木) 00時28分