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その男、メスを握れば“神”となる。

Bj出崎OVA版『BJ』のDVDを入手したちょっと後に、実は『BJ 劇場版』(1996)も買ってしまった。ストーリーはコミカライズ本を読んで知っていたし手塚治虫の原作にはない話でもあったから、それほど欲しくてならなかったというわけではないのだが、この再版を逃したら入手できなくなるかもしれないと思って、奇貨居くべしとばかりに買った。

始まって間もなく、夫が「この顔は『あしたのジョー』だ」と指摘。うん、確かにね(笑)。両方を手掛けた出崎・杉野コンビだから、BJとジョーがドッキングするのも無理はないのだけれども、アニメなどまったく見ない夫でもわかるくらい、やっぱり似ているんだよね(笑)。似ているといえば、主題歌の一部分のメロディが松田聖子の『SWEET MEMORIES』とそっくりである。

おおまかなあらすじは次のとおり。
--世界中で超人類ブームが起こっていた。従来の人間では考えられない集中力でパワーを発揮する彼らは、オリンピックや芸術の分野で次々に驚異的な活躍を見せる。ところが、実は彼らはある共通の病気に冒されていた。超人類と呼ばれる人達の入院管理をしているブレーン製薬のジョー・キャロル・ブレーンから、彼らの体に巣喰う病原菌の原因究明と手術を依頼されたブラック・ジャックは、その病原菌が脳下垂体の中に入り込んで、大量のエンドルフィンを分泌させていることを発見する。しかし、そもそも病原菌を彼らに移植して人体実験を行っていたのがジョーの仕業であることを、戦う医師団“M・S・J"のメンバーによって知らされたブラック・ジャックは、その非人道的なジョーのやり方に腹を立て、研究を降りようとした。ところが、ジョーはピノコを人質に取った上に、ブラック・ジャックの体内にその病原菌を植えつけてしまった。研究を続行しなければ、ピノコと自らの命も危険に晒されてしまうことになる。ブラック・ジャックはジョーがその菌を発見したという砂漠に赴いて、それがフルジウムという花の花粉であることを突き止める。しかし、ジョーは行き過ぎた研究を非難されて、ブレーン製薬の会長の刺客によって射殺された。ブラック・ジャックも体に入り込んだ病原菌に次第に蝕まれていく。だが、彼は長い間砂漠に住んでいる砂漠の民によって、命を救われた。彼らは、その花粉の抗体の存在を知っていたのである。抗体を手に入れたブラック・ジャックは、瀕死の状態の超人類達を救うと、ピノコとふたりで再び闇の医療の世界へと戻っていった。--(Wikipedia より)

どことなくTVアニメ『BJ21』に似ていると思うのは私だけではあるまい。大量のエンドルフィンを分泌させて人を超人にする試みは、人を不老不死にしようとするノワール・プロジェクトと同じ匂いがする。それらが新たな病気を生み出してしまうところも同じ。最後に見つかる特効薬のフルジウムに相当するのは「本間血清」だ。そして何よりも、BJを後がないところまで追い詰めて事件の核心に迫っていかざるを得ない状況を設定するという手法がそっくりだ。『BJ21』では岬の家を爆破されて帰るところもなく、21年前の爆破事故の真相を探らなくてはならなくなり、最後にはBJ自身がフェニックス病に感染するが、この劇場版ではピノコが人質に取られ、BJ自身も超人類にされてしまい、何としても治療法を見つけ出さなくてはならなくなる。

決して進んで人前に出ようとしないBJを活躍させようとすると、どうもこういうストーリーになってしまうようである(笑)。描こうとしたテーマも、医学がどこまで人間(を含む自然)や生命の問題に関与してよいのかという、同じものだったと思う。手塚治虫が原作で繰り返し描いたのもそういうテーマだから、その点では原作をスポイルするものではない。しかし、原作では、BJはそういう医学(医療)のあり方について悩むのである。その姿がBJには欠かせない大きな魅力なのだが、この2編のように追い詰められた挙句に他人がやった研究の失敗の尻拭いをせざるを得ない状況のBJには、その悩みがない。悩んでいる余裕がない。だから何かこう……、物足りないと思うのだろうな。BJにどのように悩ませて、どのような結末を持ってくるかということは、やはりオリジナル作者の手塚治虫にしか考えられないことなのかもしれない。

作画は文句なしに素晴らしい。ピノコがOVA版よりも可愛くなっているのも嬉しい。ストーリーも充分に面白いのだが……。なにぶんにも話がデカすぎる。BJ先生にはもっと我々に身近なところで、我々と等身大で、命の問題に悩んでのたうちまわっていてもらいたいと思うのは、私のわがままかなぁ。

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