« (備忘録100214) | トップページ | 天才だ »

バレンタインデーってなんだっけ

むかし読んだ笑い話。……
日本の製造会社の製品がA国に輸出されることになった。
A国からの契約書には「ただし、不良品の割合は2%以下であるものとする」と書かれていた。
日本からの返信。
「2%の不良品というのはどうやって作るのか」……

つまりそれぐらい日本製の製品というのは完璧に作られていたということで、日本人がいかにモノ作りに卓抜した技術を持ち、しかも真面目に精魂傾けて良いものを作ろうとしていたかということの証しとなる笑い話であろう。某T自動車会社にはその精神を見習ってもらいたいものだと思う。

さて、『BJ』で機械の故障、不具合を扱った作品として思い出すのは「U-18は知っていた」と「本間血腫」である。BJ先生の車もよく動かなくなっているけれども……(笑)。きょうは、時期的にもちょうど良いので「本間血腫」を取り上げてみる。

筋の上ではちょいと合点がいかない話ではあるのだ。BJは開胸手術してみてはじめて病気の正体を知るのだが、そういう一番大事なことを書かずして本間先生はBJにいったいどんな資料を残したというのか? そして「本間血腫のナゾを解き明かしてくれ」と言いながらも「手術はするな」という遺言は、無茶だ。

これは、乙姫さまから「開けてはならぬ」という玉手箱をもらった浦島太郎と同じだ。どうしたって開けたくなる。BJのためを思った本間先生の親心かもしれないが、本間先生の仇が討ちたいBJにとってはこれほど大きなジレンマはなかっただろう。しかしさすがは天才。浦島BJは変則的な方法で箱を開ける。つまり病理学的な研究やアプローチは諦めて物理的に心臓そのものを取り替えようと「ブラック・ジャック式小型人工心臓」を開発するのだ。これは玉手箱の蓋を開けるのではなくて箱の底に穴を開けて中身を知ろうとするようなものだろう。しかしそこには想像をはるかに超えたシビアな真実が……。結局、浦島BJは煙を浴びてしまう。患者の心臓はもともと人工心臓だったのだ。

本間血腫は人工心臓の故障によって引き起こされる病気であった。しかし、ここで更なる疑問が生まれる。何故それを秘密にする必要があったのだろう。過去に本間血腫の患者は二十数人いたわけで、少なくともそれを治療した医者は知っていたはずだ。それとも、その二十数例すべてで、本間先生が患者の最期を看取ったのだろうか。そしてそして、BJ先生はどうして持参した「ブラック・ジャック式小型人工心臓」と取り替えようとしなかったのだろう。「あんな精巧な人工心臓でも……完全ではなかった!!」と言っているところをみると、元の人工心臓のほうが性能が良いと思われたのだろうが、しかしそれが故障したのだから、姑息的にでも「BJ型」と取り替えなければ患者の命にかかわると思うのだが。

原作のそういう瑕(と言ってよいのかな)に一つの回答を与えたのがアニメの『BJ21』だったと思う。とても世間には公にできない組織(ノワール・プロジェクト)が人工心臓を作っていて、しかもその設計者がBJの父親(間影三)という設定だった。不老不死になるにはまず止まらない心臓が必要ということから、あの組織はこういう研究を始めたのだろう。アニメでは自家発電の完全埋め込み型の人工心臓ができていたが、原作における人工心臓も同様のものだったと思われる。ちなみに『ブラック・ジャック・ザ・カルテ』によれば、日本では埋め込み型の人工心臓の臨床使用はまだ承認されていないのだそうだ。

ネット上には、本間先生があの人工心臓を埋めたのだという解釈もある。だからこそ生体実験との非難を浴びて引退に追い込まれたのだというのだが、人工心臓であるという秘密が世間に漏れている点で辻褄が合わない。原作で描かれているところの生体実験という意味は、治す手段が確立されていないのに手術に踏み切ったという点であろう。しかし、本間先生がBJにすら書き残していないという事実から、却って、あの精巧な人工心臓は本間先生が作らせたものではなかったかという疑いも捨て切れないのである。日本のモノ作りの技術をもってすれば、可能だったんじゃないかと思う。そしてそれが承認されていないものであったから、本間先生は秘密にせざるを得なかったのかもしれない。

やっぱり謎の多いエピソードだなぁ。しかしこのエピソードの肝は、BJが医学の限界を思い知ることにあるのだから、多少の瑕には目を瞑らなくてはいけないのだろう。うん。

さて、もやもやとした話題はここまでにして……。ハートである。バレンタイン・デーである。ピノコがチョコの広告を見た新聞の日付は「昭和52年(1977)2月4日(金)」となっている。この頃には、女子の間ではバレンタイン・デーの風習は当たり前になっていたと記憶する。だがしかし、BJ先生がそれまでにチョコをもらった経験があるかどうかは五分五分というところだろうと思う。その日に綺麗なオネエチャンのいる飲み屋にでも行けばチロルチョコのひとつくらいはもらえるのかもしれないが、あの人はそういう飲み屋には行っていない。若い女子との交流もそんなにあるとは思えない。ただ、男子がチョコレートをもらえる日だという知識くらいはあったんじゃないかと思う。

「ピノコ……バレンタインデーってなんだっけ……」という台詞は、自分の言葉で傷つけてしまったピノコを思いやる言葉であると同時に、「チョコくれよ(喜ばせてくれよ、力づけてくれよ)」という、ピノコの優しさに甘えた言葉ではないかと私は思う。あま~~い♪

『虫ん坊』200502月号より「手塚マンガとチョコレート」

|

« (備忘録100214) | トップページ | 天才だ »

「ブラック・ジャック」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/141713/33396161

この記事へのトラックバック一覧です: バレンタインデーってなんだっけ:

« (備忘録100214) | トップページ | 天才だ »