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「水頭症」

「手塚治虫文庫全集」の『ブラック・ジャック』4~6巻を入手。#68「えらばれたマスク」~#126「座頭医師」が収録されているが、未収録エピソードは#76「水頭症」のみである。「漫画全集」に未収録だった次の4編が収録されているのは嬉しい。
#77「ドラキュラに捧ぐ」
#110「デカの心臓」
#122「三度目の正直」
#124「きみのミスだ!」
なお、#95「悪魔」は「魔王大尉」と改題されて収録されている。

唯一収録されなかった「水頭症」だが、「漫画全集」のみならず、「豪華版」「文庫版」にも収録されておらず、読めるのは「少年チャンピオンコミックス」においてのみである。

これが何故収録されないのか、私にはよくわからない。佳い話なのだ。水頭症患者である洋一を少々知恵遅れとして描いたのが問題なのか。いやしかし、この少年のウソにはBJもまんまとひっかかったほどであり、とても知恵が遅れているようでもない。面白おかしいキャラにしたのが、同病で苦しむ患者に対して失礼だというのか。彼が余命いくばくもないと知ってひとり泣くシーンを見よ。これだけの悲しみを抱えてなお周りの人を楽しませようとする健気な心意気には感動するではないか。

Photo結局、手術法が古いことが理由なのではないかと思う。作中で言われている「トルチルドセン氏法」や「ダンディ氏法」は、「患者の肉体的負担が大きいことや成功率の低さから、本篇連載当時にあってさえ、すでに行われなくなっていた古典的手術方法である」と『ブラック・ジャック・ザ・カルテ 2』(B・J症例検討会著)で指摘されている。医学的に古い知識が書かれた作品だから未収録、というのが一番しっくりくる理由のように思う。

この作品中には、忘れてはならないBJのセリフがある。手塚医師が「あいかわらず がめついな……」となじったのに対して、BJは怒気も露わにこう言うのだ。「がめつい? ほかの分野ならいざしらず… 患者のいのちをかけて手術をする医者が じゅうぶんな金をもらってなぜ悪いんだ!!」。彼の信念が余すところなく表されたセリフだ。

また、ラストもカッコいい。なんとかBJに手術をして欲しい洋一がBJをかき口説く。「あべこべ亭珍保子は一生かかっても手術代はらうろ。ぼくものまねうまいらろ。ぜったい芸人になれるやろ」。「その約束守るな?」というBJの表情が好い。優しい顔をして…、そしてその次のコマではキリリとひきしまった顔でコートを脱ぐのだ。「これ 手術代の借用書。ウワーハハハ」と洋一。「麻酔」とBJ。外は雨……。このテンポの良さには惚れ惚れする。

外科的には問題があるのかもしれないが、是非ご一読をお薦めしたいエピソードである。

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