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てるてる坊主

月曜日は『BJ』語り。時節柄、きょうは#133「てるてる坊主」について。

BJ先生の副業は「金貸し」であるらしい。#144「金!金!金!」でも天馬医師に選挙資金を貸しているBJだが、この「てるてる坊主」でも先輩に当たる竹中医師に競馬の資金として3千万円を融通している。

物語では、金を返すことなく脳溢血で急死してしまった竹中医師の夫人と幼い息子をBJが助ける姿が描かれている。一刻も早く返済してもらいたいから自分を竹中外科に雇え、そしたら一ヶ月でそれくらい稼がせてやると言うBJ。これも彼一流の照れであり「言い訳」である。本当は、遺された夫人と子どもが気になってしかたがないくせに、素直に助力を申し出ることをしない。「べ、別にお前さんたちがどうなろうと関係ないんだからねッ。お金を返してほしいだけなんだからねッ」……う~ん、ツンデレだ(笑)。

以前に書いたと思うが、全体としては映画『シェーン』を彷彿とさせるようなストーリーである。竹中洋少年は、最初はBJのことを悪い奴だと言って嫌っている。自分のいない間に部屋に入ったと怒ったりもしている。それが、BJが母親を助ける様子を見、患者に一つずつてるてる坊主を渡すのだという話を聞いたりするうちに、次第に態度を軟化させていく。

バンチ氏症の患者のオペで4千万円を稼ぐBJ。3千万はいただくが「それ以外はおたくのもうけですよ」。……って、まぁ、やることがたいがいキザだ。読んでいるこっちが、こっ恥ずかしくなる(笑)。

そして一ヶ月後、外は雨。「そろそろもう私もご用ずみだ」と帰り支度を始める先生。懸命に引きとめる竹中未亡人が「もうお会いできませんの?」と言う追いすがるような表情とバックに注目。こんな細かい薔薇のバック、ほかの場面では見たことがない。少女マンガのようなこのバックがすべてを物語っている。またもや惚れられてしまったBJ先生なのであった(笑)。

そこをクールに切り抜けた先生を、今度は洋が呼び止める。自室に「入ってきて」と勧め、先生のこどもに、と本をプレゼントする。そこでBJがお返しとしてポケットから取り出すのが、てるてる坊主である。18個ほどもある。これだけ入れていればポケットがぱんぱんに膨らみそうなものだが、外見上そんなこともなく、BJは次々とまるで手品のようにてるてる坊主を出し続けるのだ。軒下にずらっと並べて吊るしたてるてる坊主を洋と眺めた後、BJは竹中外科を去っていく。

ラストの洋の日記の文面はこうだ。「僕はブラック・ジャック先生が世界で一番偉いお医者だと思います。二番目に偉いのはママです。僕はきっと三番目に偉いお医者に……」(原文はもっとひらがなが多い)。物語のはじめには「パパは世界中で一番偉いお医者だと思います。ママはその次に偉いお医者です。僕は大きくなったらきっと世界で三番目に偉いお医者さんになろうと思います」と書いていたことを思うと、BJ先生の株が急速に上がり、父親の株が急激に下がったことが伺える。あまりに露骨で出来すぎた観もあるストーリーではあるけれど、夫人と洋の母子を、自分と母親に重ね合わせているのだろうと見れば、ファンにとっては胸キュンもののお話となる。

また、先生の趣味(?)はてるてる坊主作りだということもわかって、なかなかに興味深い。しかし、日頃自分のところに来る患者にも渡しているのかというと、そういう事実はまったく描かれてはいない。とすると、だ。竹中母子の歓心を買うために、このときだけ優しさを演出するためにてるてる坊主を作っていたと考えられなくもない。自分の古くなったランニングシャツでも裂いて作れば元手もかからない。くたびれたランニングシャツであの細かい薔薇のバックを引き出せるのだから、この男、たいしたテクニシャンだ(爆)。

「もうお会いできませんの?」と言う竹中未亡人に「たぶんね」と応えた先生だが、たぶんこの先ずっと、竹中外科の動向は見守り続けるんじゃないかと思う。もしも経営が左前になったと聞けば、またやって来て「ご主人の借金がまだ他にもありまして……」とかなんとか言って、再び雇われて働くのだろう。そして誰よりも洋が医者になるのを楽しみにしているに違いない。なにしろ洋は世界一の天才外科医のコートの中を知っている数少ない人物の一人である。そしてそれは、いつでもどこでも手術ができるように準備を怠らないという外科医の心得を、BJから直接教わったというのに等しいのだから……。

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