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恩讐の彼方に

月曜日は『BJ』語り。

一般に、医者は身内の手術の執刀はしないと言われているようだが、ネットで調べた限りにおいては、必ずしもそうではなく、身内を手術したというお医者さんも何人か見つけることができた。しかしもちろん手術といってもいろいろあるわけで、簡単な手術なら自分でやるが、命にかかわるような手術の場合は他の先生に頼んだという例もあった。また女房ならできるが子どもならできないだろうというような例もあったり(笑)、やはり患者が身内の場合は「冷静な判断ができない恐れ」を感じる外科医は多いようだ。

手術をする場合、外科医の力量もさることながら、その心理状態も成功の可否を左右する要因と言えそうだ。

『BJ』に出てくるお医者さんはどうか。

まず、BQ。BJの女性版と言われ、患者の手足を躊躇なくバッサバッサと切断する彼女だが、婚約者ロックが大怪我をしたときには、その脚を切ることができなかった。折り良く(悪しく?)やってきたBJが、BQの代わりに手術を行い、結局切らずに治してしまった。

「流れ作業」に出てくる福禄外科病院の院長。彼の幼い娘・和子が車にはねられて手術をすることになるが、結局死なせてしまう。ところが顔を見てみると和子ではない。BJが患者をすりかえて、別室で和子の手術を成功させていたのである。ちょいと問題のありそうな処置ではあるが、身内の手術という観点から見ると、BJは院長が自分の娘の手術に失敗しそうだと見越して、患者をすりかえたのではないかと思われる。

またこれは身内の手術というわけではないが、「雪の訪問者」の関根医師。彼は手術中に時々様子がおかしくなる。三年前に家で妻が亡くなったとき、彼は病院で手術をしていた。その自責と悔恨の情と、仕事が憎いという思いに襲われ、手術中に思わずカッとしてメスを握りしめるのだと言う。助手についたBJが適切にリードして手術は成功、関根医師も悩みをふっきることができた。施術者の心理にはいろいろあるのだということを、BJはよく知っているように思われる。

そしてBJ自身はどうか。身内といえばピノコだが、「ガス」でBJはBJらしからぬ失敗をしている。開腹する場所を間違えるのだ。タイムリミットが迫る状況で慌てているのはわかるが、この患者がピノコでなかったらおそらく一発でカプセルを探し当てているのではないかと思う。

また身内同然と考えてもよいと思うのは、めぐみさんの手術だ。心から愛している女性の身体から子宮と卵巣を取り除く手術は、おそらくBJが行った全ての手術のうち最も辛いものだったろうと思う。恋を捨ててでもめぐみさんに生きていて欲しいと願ったこの手術、よく成功したものだ。この辛さを知っているからこそ、彼はBQを助け、福禄院長の患者をすり替えたのではないかと思う。関根医師には「ムガムチュウで切りつけますよ。とてもそんな(悩んだりする)よゆうなんか持てないんですよ」と言っているが、これは100%の真実ではない。自分と関わりのない患者なら「ムガムチュウ」にもなるだろうが、BJ先生だって、思わず患者にハサミ(?)を振り上げたことがあるのだから……。(「二人目がいた」)

まるで神の手だと言われるほどのBJの技術だが、気胸の手術のときには手が震えるし、その心理や精神状態如何では失敗する可能性だって充分あるのである。それを意志の力で抑えつけたりなんかしながら悪戦苦闘して成功させているからこそ、魅力があるんだよね、この男。

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