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70億人

国連人口基金が10月26日に発表した「世界人口白書2011」によると、世界人口は本日10月31日に70億人を(少なくとも象徴的には)突破するという。日本では本日生まれた赤ちゃん(で希望する者)全員に対して、70億人目の認定証を発行するとか聞いた。おめでとう。すくすく育ってくれよ♪

赤ちゃんが生まれるのは確かに文句なしにめでたい。おめでたいことではあるのだが、このグラフなどを見ると、将来は大丈夫なのかと心配にもなろうというものだ。

月曜日は『BJ』語り。きょうは「ちぢむ!!」を取り上げる。

アフリカの奥地で、人間を含む動物の体が縮んでいく奇病が発生する。現地で治療に当たっていたBJの恩師・戸隠先生も既に感染している。BJは原因究明に努め、ついに免疫血清を作ることに成功するのだが、戸隠先生は「これは神の警告だ。限られたこの地球の食糧を生きもの全部に分かち合うには、体を縮小しなければだめだという意味かも……」と言い残して帰らぬ人となる。赤ん坊ほどに縮んでしまった戸隠先生の体を捧げ持ち、BJは絶叫する。
「神さまとやら! あなたは残酷だぞ。医者は人間の病気をなおして命を助ける! その結果世界じゅうに人間がバクハツ的にふえ、食糧危機がきて何億人も飢えて死んでいく……そいつがあなたのおぼしめしなら……医者はなんのためにあるんだ」

この話が描かれた1974年当時、世界人口はまだ40億人だった。私が生まれた1960年には30億人、1900年には20億人、1800年には10億人、ず~っと遡って紀元1年には2億人だ。

連載当時、中学生だった私にはこのBJのセリフがピンと来なかった。いや、それは突飛すぎるでしょう。医者の存在が人口爆発を招いているわけじゃないから。お医者さんは絶対必要だよ~(笑)なんて思っていた。しかし今思うと、BJの叫びは当たっている。医療の発達によってヒトが長生きできるようになったことは、急激な人口増加の一つの要因であることに間違いはない。私が生まれたころ、1960年代には日本人の寿命は男女とも60歳代だった。それがたった半世紀で20歳も長生きできるようになったのだ。そりゃあ人口が増えるはずだ。

人口増加と食糧危機に医者の存在意義を絡めて、これはシリーズ中5本の指に入るほど重い内容を描いたエピソードだ。後にBJは「不死鳥」の中で、「おれの仕事は人間をなおすことだが、人間を死ななくすることじゃない」と語っていて、彼なりのスタンスは示されているが、しかしこれはそのままなら死んでしまうはずの人間の寿命をいくらか延ばすことに他ならないわけで、マクロ的に見れば人口増加に加担していることに変わりはない。BJ先生のジレンマは解決されない。

いつかは、地球が人口を養えなくなるときが来るに違いない。食糧だけでなく、水やエネルギーが足りなくなる日が来る。飢えだけでなく寒さや暑さで人が死ぬようになるかもしれない。人口を減らさなくてはいけないと、世界規模で考えなくてはならなくなる日が来るだろう。そんなとき、医者はどうするのか。助けられる、今までなら助けていた患者を見殺しにするのだろうか。数年前から問題になっている患者のたらい回し。医師の不足という現象で、その前兆はもう現れてきているのかもしれないと思ったりする。

しかし結局は、これは医者の側の問題ではなくて、患者側の意識の問題だろうと思う。自分の生き方と死に方をどんなふうにするか、それを常に考えておかなくてはならない状況になってきているのではないかと思う。過ぎた延命治療はしてくれるな、とか、今度発作が起きたら放っておいてくれ、とか。更には、安楽死医を呼んでくれ、とか。ドクター・キリコの存在というのは、こういうとき、間違いなく「救い」だ。

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