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2011年11月

ヤマありオチあり意味もあり

談志が死んだ。戒名は「立川雲黒斎家元勝手居士」と生前自分で決めていたそうだ。どこまでも生意気で人を食った人物である。25日の朝日新聞「天声人語」に、次のような逸話が載っていた。「天才つながりか、手塚治虫さんと親しかった。漫画家に「丸が描けなくなりました」と明かされた談志さん、『先生にしか描けない丸もある』と励ましたが、似た晩年となった」。ご冥福を祈りたい。

秋田文庫版『BJ』4巻の解説はその立川談志が書いている。少々とっ散らかった印象の文章で、たいしてBJ研究の役には立たないが(笑)、談志がいかに手塚治虫を好きだったか、神と崇めていたかが伺える内容である。最後の部分を転記しておこう。

「私の本棚は、落語の資料と手塚先生がほとんどである。手塚先生を信仰したのは間違っていなかった、とつくづく思い、その思いは増々つのる。その神様に、“談志さんのためなら、何でもしてあげる”って云われたんだぜ俺様は。百万人に嫌われたって、ビクともしないのは当り前だ。手塚治虫(かみさま)がこちとらにゃぁついているのだ、文句あんめぇ。」

さてその談志だが、「手塚さんの漫画は実に落語的なサゲが多い」と指摘したことがあったそうだ。きょうはそこらへんについて……。

Wikipediaによれば、落語の「落ち(“下げ”とも言う)」には以下のようなものがある。
・にわか落ち
 駄洒落の落ち、「地口落ち」とも
・拍子落ち
 何度か目の落ちで終わるもの
・逆さ落ち
 立場が入れ替わるもの
・考え落ち
 パッと聞いたところではよく分からないがその後よく考えると笑えてくるもの
・まわり落ち
 結末が、噺の最初に戻るもの
・見立て落ち
 意表をつく結末になるもの
・間抜け落ち
 間抜けなことを言って終わるもの
・とたん落ち
 決めの台詞で終わるもの
・ぶっつけ落ち
 全く関係のない落ちを持って来て、終わりにする。(『やかん』が、代表的な例)
・しぐさ落ち
 身振りで表して終わるもの
 しぐさ落ちは、話芸による落語のなかでも特異であると言える。演者が実際に高座で倒れる『死神』が代表例。
・冗談落ち
 本来の下げまで語ると持ち時間内で収まらないとき、切りの良い所で「冗談言っちゃいけねえ」といって終わらせる。

『BJ』で多いのは「とたん落ち」だろうか。最後にBJ先生の決めの台詞で終わる話として思い出すのは「助け合い」「おばあちゃん」「もらい水」「病院ジャック」等々、枚挙に暇がない。「見立て落ち」の名作は「ある老婆の思い出」か。「山小屋の一夜」も「見立て落ち」に入るかも。「ぶっつけ落ち」なら「幸運な男」「モルモット」かな。

また、上記の分類には入っていないが、「夢落ち(波乱に満ちたストーリー展開を見せるが、「それは夢だった」という結末で終わること)」というのもある。談志が得意とした「芝浜」は夢落ちではないが、噺の中でそういうモチーフが現れる。それと似ているのが「ハッスルピノコ」でピノコが勉強するシーンだろう。そして本当の「夢落ち」は「人生という名のSL」。「雪の夜ばなし」は「夢落ち」なのかどうか判断に迷うところ。

あと、『BJ』にはどんでん返し、謎解きの落ちも多い。というか、シリーズを通して『BJ』にはミステリの要素が溢れている。落語のような落ちがあり、ミステリのような味わいがあるというのは、この『BJ』という作品一篇一篇の構成がどれほどきっちりと考えられて練り上げられているかの証拠だろうと思う。わずか20ページほどの短編、それも週刊連載の中でそれをやっているというクオリティの高さに、改めて感嘆する。

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「…学生ですぜ?」

本日発売の「ヤングチャンピオン No24」から「ヤング ブラック・ジャック」(田畑由秋脚本 大熊ゆうご画)の連載が始まった。早速感想を……と行きたいところだが、まずは購入の経過から。

4時頃のこと。この時間帯ならコンビニの雑誌コーナーにもひと気がなかろうと、最寄のポ○ラへ行く。目論見どおり、立ち読み客は誰もいない。ホクホクと「ヤンチャン」と「イブニング」を引っ掴み、レジへと向かう。タッチの差で、入店してきた男性客2人が雑誌コーナーへやってくるのとすれ違う。ふふふ。買ってしまえばこっちのもんだもんね~。計算してもらっていると、レジのおば…お嬢さんの手がふと止まった。そして「ヤングチャンピオンにはおまけが付いているはずですが……」とのたまう。

え?と思っていると、素早くレジカウンターから出てきて雑誌コーナーへ行き、立ち読みしている男性客2人の間に割り込んで残りの「ヤンチャン」を確認するおば…お嬢さん。そして取り出した、AKB48の水着姿がプリントされたクリアファイルを振りかざし、「お客様、これがおまけです~♪」と満面の笑み。ちょ、そんな大声で~! そこのおっちゃん2人、物珍しげな顔してこっち見んなー! ……▄█▀█● 

かくして、私がAKBの水着クリアファイルの付いた「ヤンチャン」を購入したことは店内あまねく知れ渡ることになったのだった。……もう当分あの店には行くまい。

さて、そういう次第で、顔から火が出る思いをして買ってきた「ヤンチャン」である。これで面白くなかったらグレてやる~と思いながら読んだ「ヤング ブラック・ジャック」、なかなか面白かったと思うのはこの一連の出来事に対する防衛機制だろうか(笑)。

ときは1968年、ストーリーは、インターン制度に代わる登録医制度に反対して無期限ストを打ち安田講堂を占拠する学生たちのシーンから始まる。東大から他大学へと広がった学生運動のさなか、間黒男はひとり勉学に余念が無い(どこの大学だろう?)。デモに参加しろと誘われても「俺にそんな暇はないんだ!!」とつっぱねる間くん、ノンポリです(笑)。上級生の女医(インターン)岡本の頼みを受け、事故で手足を切断されてしまった少年の手術を引き受けることに。それは教授でさえも「繋げられる医者がいるなら見てみたいものだよ」と言うほどの難手術。そして彼は大金をふっかける……。

と、まだ読んでいない方のために、あらすじはここまでにしておこう。

黒男くんはなかなかクールだし、手塚ファンにはお馴染みのキャラも出てくる。絵柄も嫌いではないし、テンポもなかなか良い。やはりこの時点でのBJを描くなら、なぜ無免許医になったのか、なぜ大金をふっかけるのか、という2点は避けて通れないようで、今後どういう解釈がなされるのか楽しみである。間違っても、学生運動のゴタゴタで医師国家試験に合格しないまま、なし崩し的に無免許になったという展開にだけはなってほしくないが。それだったら後からいくらでも試験は受けられたはずで、BJがあくまでも無免許で押し通す理由にはならないと思うから。

ひとつ気になったのは、黒男くんの口調。「~ですぜ」を連発しているが、ちゃんとした医者になろうとまだこの時点では思っている医学生の黒男くんが使うのは、ちょっと違和感がある。「~ですぜ」は「ブラック・ジャック」を名乗るようになった後、ちょいとヤサグレてからの口調だと思うなァ。それともう一つ特記事項。学生時代の黒男くん、すっげーイイ身体してます。でもって変なポーズ決めてます。ナルくんか……(笑)。

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UNHATE

そろそろ旧聞に属しつつあるので、忘れないうちに書いておきます。ベネトンが打った広告。あの世界各国・各界のリーダー同士のキス写真ですよ。賛否両論巻き起こしているようですが、私は良いと思いました。正直、男同士のキスなんて見たくもないですが、……いや、絶世の美男同士なら見たいかもしれませんが、……だからそれは単に美醜の感覚の問題のようですが、……いや、別に皆さん方がブサイクだとか言ってるわけではないのですが……、う~ん、ワタクシ全世界を敵に回したでしょうか(笑)。

絵面の気持ち悪さはあるものの、これほど明確な意図と主張と願いを持つポスターは見たことがありません。「UNHATE(反・憎悪)」という文字を見なくても意図するところが判ります。「憎むことをやめて、仲良くしよう」これです。だからこれ、却って見た目が醜悪なほうが効果的ですよね。触れたくもない相手とキスをしよう、その勇気を持とう、ってことですから(笑)。

バチカンの広報官は「法王の写真を改ざんし、商業目的で使うのは絶対に受け入れられない。尊敬の念がなく、信徒の感情も侮辱している」として法的措置を取るようですし、ホワイトハウスもベネトンを批判しているようです。神の代理人たるローマ法王にこんなことをさせたのはいけないことなのかもしれませんが(キリスト教のことはよくわかりません)、国家元首あたりだったら怒るのは大人気ないような気もします。「はっはっは、こんな世の中になればいいねえ」と言えるくらいのリーダーであってほしいと思います。バチカンとホワイトハウス以外の反応はどうなんでしょう、気になるところです。

そりゃあ、本人たちにしてみれば決して気持ちの良いものではないだろうとは思います。しかし実際、このポスターを見て「男同士のキスなんか見たくない」「これは広告としてはやりすぎだ」「悪趣味だ」「あざとい」等々の感想を抱く者は多いとしても、「UNHATE(反・憎悪)」の主張に賛同しない者はそう多くはないように思います。これら数組の人たちが象徴する国やイデオロギーや宗教が、お互いを憎悪せず歩み寄ることができれば、少なくとも今よりは紛争の少ない世界が実現できるのではないでしょうか。

現在の世界情勢を的確に示し(ひと昔前だったら、絶対にソ連が取り上げられていたでしょうね)、且つ世界平和を希求する、見事な広告だったと私は思います。

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「お嬢様はアホでいらっしゃいますか」

Photo Photo_2 『謎解きはディナーのあとで』『謎解きはディナーのあとで 2』(東川篤哉著)読了。

--「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」令嬢刑事と毒舌執事が難事件に挑戦。ユーモアたっぷりの本格ミステリ。--

2011年の本屋大賞第1位を獲得したときから気になっていたものの、話題となったあの人気の表紙を見るたびに「小中学生の読み物では?」との思いが邪魔をして、却っていままで読めなかった作品。この秋からテレビドラマ化されているのを観たらなかなか面白かったので再び気になり始め、この度とうとう買ってしまった。で、正直な感想……やっぱりこれは小中学生の読み物である(笑)。

決して面白くないわけではない。それどころか、大変に面白い。大財閥の令嬢が所轄の刑事をしている非現実的な設定と、一介の執事が主であるところの令嬢に向かって「お嬢様はアホでいらっしゃいますか」「お嬢様の目は節穴でございますか」「お嬢様は引っ込んでいてくださいませ」等々の暴言を吐くドタバタ喜劇的な乗りの良さと、当て馬的存在の風祭警部のチャラ男ぶり。これはもう所謂「キャラが立っている」と評する他ないマンガの世界だ。

そんないかにも作り物めいた世界で起こる事件もまた非常にトリッキー。それをお嬢様から話を聞いただけで執事の影山が謎解きをする。所謂アームチェア・ディテクティブものだが(ドラマでは影山はどこにでも現れるけれども・笑)、どこまでも理詰めな謎解きで、安っぽい2時間サスペンスドラマ的ないい加減さは無い。「本格ミステリ」と謳ってあるのもあながち嘘ではない。

ただ「謎解き」と軽妙な会話とテンポの良いスジの運びに主眼が置かれているために、全体の印象が非常に軽い。証拠があまりにも都合よく簡単に見つかる印象があるし、犯人が犯罪に到る心理などはほとんど描写されない(テレビドラマのほうはそういう情緒的な面を描き足したりしているが)。だから、なんだか『名探偵コナン』を観ているような感じがする。小中学生向きだというのはそこのところである。「謎解き」というパズルをしているような感覚なのだ。謎解きをするためだけに作られた謎……と言ってしまっては実も蓋もないか。

しかし、大変に面白いし、読後はスッキリした気分になれる作品ではある。謎解きゲームを楽しみたい方は、是非!

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111111

2011年11月11日。「1」が6個並ぶ日。だからどうした?と思うが、世界では様々な催しがあったらしい。グリニッジ標準時の11時11分に合わせて地球史上最大のオーケストラを結成しようという企画(Massive Symphony)など、いかにもスマートフォンが普及した今年ならではの試みだろう。

何かを多くの人と一緒にやりたいという気持ちは何なのだろうな。自分は独りじゃない、全世界の人と繋がっているという証しが欲しいのか、一体感や高揚感や達成感が欲しいのか。そういう意味での興味はあるが、人がケータイやスマホにいいように使われている感じもして、なんだかなあと思う天邪鬼な私である。

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(備忘録111109)

・天皇陛下が体調を崩して入院され、その間の国事行為は皇太子殿下が代行されている。そんなやんごとなき辺りのことなど、下々のわれわれには何の関係もないかと思っていたが、夫の仕事に影響が(ほんのちょっと)あった。
夫はギフト関係の仕事をしているのだが、叙勲を受けた方々がお祝いのお返しをされるときに付ける挨拶状の文言を変えなくてはならなくなったのだ。従来は「皇居○○の間において天皇陛下に拝謁の栄誉を賜り……」というような定型文なのだが、これを皇太子殿下に変えなくてはならない。ところが、皇太子の場合なら「拝謁」ではなく「接見」と言うのだという指摘があったそうで、ただそれが本当に正しいのかどうかが誰にもわからず、現在混迷の度を増しているのだそうだ(笑)。
「接見」というと、私などは弁護士が被告人(被疑者か?)に会いにいくイメージしかないが、辞書を引くと「身分の高い人が公式に会見すること。引見。」とあるからそれで良いのだろうとは思う。だが「拝謁(:身分の高い人に面会することをへりくだっていう語)」ではいけないのかどうかがわからない。そもそも「接見」なら「身分の高い人→(私)」だし、「拝謁」なら「身分の高い人←(私)」で、ベクトルの向きが違うような気がするのだが……。
さて、どんな挨拶状になるのかな?←他人事(笑)

・「ヤングチャンピオン」24号(11月22日発売)から、「ヤング ブラック・ジャック」(脚本:田畑由秋 漫画:大熊由護)が連載予定。
きょうコンビニで前号に載っている予告を見てきたが、1960年代、医学生時代のBJが描かれるらしい。1948年頃の生まれとすると、うん、それくらいの計算になる。BJのカットが載っていて、それがリボンタイじゃなくて普通のネクタイだったのに、意味もなくニヤニヤしたりする(不審者……)。
しかしそれにしても「ヤングチャンピオン」。女の子がいっぱい載った表紙で、手に取るのに周りが気になる。中身はもっとアレでソレなので、中年のおばさんが買うのは勇気が要りそうだ。う~む、試練だ。

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