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ヤマありオチあり意味もあり

談志が死んだ。戒名は「立川雲黒斎家元勝手居士」と生前自分で決めていたそうだ。どこまでも生意気で人を食った人物である。25日の朝日新聞「天声人語」に、次のような逸話が載っていた。「天才つながりか、手塚治虫さんと親しかった。漫画家に「丸が描けなくなりました」と明かされた談志さん、『先生にしか描けない丸もある』と励ましたが、似た晩年となった」。ご冥福を祈りたい。

秋田文庫版『BJ』4巻の解説はその立川談志が書いている。少々とっ散らかった印象の文章で、たいしてBJ研究の役には立たないが(笑)、談志がいかに手塚治虫を好きだったか、神と崇めていたかが伺える内容である。最後の部分を転記しておこう。

「私の本棚は、落語の資料と手塚先生がほとんどである。手塚先生を信仰したのは間違っていなかった、とつくづく思い、その思いは増々つのる。その神様に、“談志さんのためなら、何でもしてあげる”って云われたんだぜ俺様は。百万人に嫌われたって、ビクともしないのは当り前だ。手塚治虫(かみさま)がこちとらにゃぁついているのだ、文句あんめぇ。」

さてその談志だが、「手塚さんの漫画は実に落語的なサゲが多い」と指摘したことがあったそうだ。きょうはそこらへんについて……。

Wikipediaによれば、落語の「落ち(“下げ”とも言う)」には以下のようなものがある。
・にわか落ち
 駄洒落の落ち、「地口落ち」とも
・拍子落ち
 何度か目の落ちで終わるもの
・逆さ落ち
 立場が入れ替わるもの
・考え落ち
 パッと聞いたところではよく分からないがその後よく考えると笑えてくるもの
・まわり落ち
 結末が、噺の最初に戻るもの
・見立て落ち
 意表をつく結末になるもの
・間抜け落ち
 間抜けなことを言って終わるもの
・とたん落ち
 決めの台詞で終わるもの
・ぶっつけ落ち
 全く関係のない落ちを持って来て、終わりにする。(『やかん』が、代表的な例)
・しぐさ落ち
 身振りで表して終わるもの
 しぐさ落ちは、話芸による落語のなかでも特異であると言える。演者が実際に高座で倒れる『死神』が代表例。
・冗談落ち
 本来の下げまで語ると持ち時間内で収まらないとき、切りの良い所で「冗談言っちゃいけねえ」といって終わらせる。

『BJ』で多いのは「とたん落ち」だろうか。最後にBJ先生の決めの台詞で終わる話として思い出すのは「助け合い」「おばあちゃん」「もらい水」「病院ジャック」等々、枚挙に暇がない。「見立て落ち」の名作は「ある老婆の思い出」か。「山小屋の一夜」も「見立て落ち」に入るかも。「ぶっつけ落ち」なら「幸運な男」「モルモット」かな。

また、上記の分類には入っていないが、「夢落ち(波乱に満ちたストーリー展開を見せるが、「それは夢だった」という結末で終わること)」というのもある。談志が得意とした「芝浜」は夢落ちではないが、噺の中でそういうモチーフが現れる。それと似ているのが「ハッスルピノコ」でピノコが勉強するシーンだろう。そして本当の「夢落ち」は「人生という名のSL」。「雪の夜ばなし」は「夢落ち」なのかどうか判断に迷うところ。

あと、『BJ』にはどんでん返し、謎解きの落ちも多い。というか、シリーズを通して『BJ』にはミステリの要素が溢れている。落語のような落ちがあり、ミステリのような味わいがあるというのは、この『BJ』という作品一篇一篇の構成がどれほどきっちりと考えられて練り上げられているかの証拠だろうと思う。わずか20ページほどの短編、それも週刊連載の中でそれをやっているというクオリティの高さに、改めて感嘆する。

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