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「私は医者だ」(『ブラック・ジャック FINAL』【OVA】感想)

Final昨日発売された『ブラック・ジャック FINAL』を観た。今年4月に急逝した出崎統監督の遺作である。簡単に感想を書いてみる。

・Karte 11「おとずれた思い出」
舞いの宗家・西園寺家が舞台となっていることもあって、全編これ夢の中にいるような美しい映像を堪能できる。原作の「畸形嚢腫」「おとずれた思い出」に「命を生ける」をプラスしたような趣きのストーリーだが、ピノコの姉の造形が原作とはまったく異なっている。原作ではピノコを毛嫌いしていた彼女だが、この作品では西園寺家の双子にまつわる呪いを解くために懸命になっており、幻の分身を慕っている。ピノコが生まれてから10年後という設定。

(ここからはネタバレ)

西園寺家の双子は、生まれれば5年以内に必ずどちらかが死ぬ運命にある。姉・ゆりえとピノコが両方生まれていたら、ゆりえが死ぬ運命にあったようだ。それがピノコは生まれることができず、畸形嚢腫となったために、ゆりえは生きて舞いに精進していた。ピノコがお腹の中にいるうちはよかったが、切り離されてしまったために衰弱していくゆりえ。BJはピノコの体の一部をゆりえに戻すことでゆりえを救う。

BJの医学的アプローチと、神事「白鷺天昇」を舞うことで呪いを解こうとするゆりえの対比が印象的だった。ピノコの最後の一言には、ちょっとゾクッとするものがあったのだが、ここは内緒にしておこう。ピノコの存在と運命を幻想的に描いた一作だった。ちなみに、幻想のピノコは日常のピノコより儚げでかわいい(笑)。

・Karte 12「美しき報復者」
BJ先生と言えば「拉致」だ(笑)。当り前のように拉致されて安遼国に連れてこられるのだが、この安遼国がどう見ても北○鮮。ここまで描いて大丈夫なのかと少々心配になる。

下敷きになっている原作は……「アナフィラキシー」「こっぱみじん」「魔王大尉」「パク船長」あたりだろうか。同じOVAシリーズの「マリアたちの勲章」を彷彿とさせる戦闘シーンが続く。

(ここからはネタバレ)

印象的だったセリフを記す。
(中盤)
BJ「私は時期を見て、将軍を治しにいく」
L「無理矢理連れてこられ、命まで狙われ、その上危険を冒してまであんな男のために。なぜ?!」
BJ「誰であろうと、私にとってはただの病に苦しむ患者だ。そして私は医者だ」

↑カッコよすぎ(笑)。原作の先生なら「3億の仕事なんでね」とかわす気がする。

(そして終盤)
BJ「私は医者になってきょうほど後悔したことはない! チェ・ヒョク、おまえの手術をしたことをな!!」

↑ものすごい怒りの形相で言っている。冷酷非道な独裁者の憎々しさを描いて、このエピソードでの白眉のシーンだろうと思うのだが、うーん、先生がこんなことを言うかなぁ。ふと思い出したのは「戦場ガ原のゴリベエ」のラストシーン。「クソッタレめ!!」の一言が効いていた。あんまりくだくだしく自分の思いを吐露しないのが原作の先生だが、出崎BJだとこんなふうに説明しちゃうんだろうなぁと思った。

2作とも、淡々とした抑えたトーンで作られている。それまでの作品と比べると、割りとあっけないかな。OP、ED がRHODES の「Just Before The Sunrise」と「I'll Be Back Again〜月の光」だったのが嬉しく懐かしかった。

アフレコの様子を見たときには、Karte 12は先生のラブロマンスになるかと思ったりしたが、そこまでは描かれず、先生は何事もなかったかのように岬の家に帰っている。最後はやっぱりあの家だよね。先生を日常に戻して、出崎版シリーズは終わりを告げた。もう続きが永遠に見られないかと思うと、やはり悲しい。DVDカバーの、水葬に附されたようなBJ先生を見るにつけても、一つの世界が完結したことを思い知らされる。改めてご冥福をお祈りする。(-人-)

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