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「僕にできるんだから、あなたにだってできます」

『神様のベレー帽 手塚治虫のブラックジャック創作秘話』を観た。なんかもう涙ボロボロ出てきて困った。感動したよ~。

タイトルには「神様」とあるが、ここで描かれるのは全知全能の神でもなければ天才というのでもない、時間と債権者に追われながら渾身の努力で作品を作り出す手塚治虫の姿である。

草彅クンの手塚先生は私の想像する手塚先生より多少おっとりしていたが、なかなか良かったと思う。貧乏揺すりしながら机にかじりつくようにして汗だくで原稿を描いている後ろ姿はまさに手塚先生に見えた。

大島優子ちゃんも熱演していた。初めの頃はいかにも現代っ子らしい、一生懸命になることをダサいと思うような、やる気の無い編集者だったが、最後は全力を出し切ることの気持ちよさ素晴らしさを学んで、とても素敵な笑顔を見せてくれた♪

佐藤浩市の壁村編集長は本当に手塚治虫が好きだったのだろうなぁと思う。「手塚が描くと言ってるんだから待つしかないだろう!」なんてなかなか言える言葉じゃない。欲を言えば、手塚プロに乗り込んで齧りかけのリンゴを投げつけたというエピソードもやって欲しかったが……(笑)。

そして、手塚先生を囲む手塚プロの面々がまたそれぞれに良かった。「ベレー帽がない」「高田馬場じゃなくて下北沢のカップうどんが食べたい」「浅草の柿の種が食べたい」「スイカが食べたい」「スリッパがないと描けない」「チョコーーー!」等々、手塚先生のわがままに付き合うスタッフさん達の温かさ。「BJはそんなふうに歩かないんですよ」とリテイクを連発されても、はははと笑ってやり直す余裕(もう時間はないのにもかかわらず、だ)。

それもこれもただただ手塚治虫という一人の漫画家が諦めもしないし妥協もしない姿勢を貫いたからなのだろう。周りの関係者たちは皆その熱意に動かされ、そしてそれぞれが己のベストを尽くしたのだ。いいなあ、いいなあ。最近そんな気持ちや努力する姿勢なんてとんと忘れていたなあ……。効率や才能は関係ない、成果主義でもない。ただ全力を尽くす過程を経験することが尊いのだ。そしてそれは誰にでもできることだと手塚治虫は言う。「僕にできるんだから、あなたにだってできます」。う~む、頭にガツンと一発くらった気分がする。

で、私がどこで泣いたかというと、まず『BJ』1作目の原稿が出来上がったとき。うわ、これリアルタイムで読んだんだよ! この原稿からすべてが始まってBJという宝物に出会えたのだと思うと涙が出た。次にラス前、アニメ『バンダーブック』完成記念の写真を見たとき。進行担当者の清々しい笑顔を見たらグッと来た。そして大ラス、手塚先生の机にかじりつく後ろ姿に涙がぶわ~っと……。手塚先生がこんなふうに死に物狂いで描いた作品がなかったら、今の私は全然違う人間になっていただろうと思う。今さらだが、感謝の思いを捧げたい。

以上が全体の感想。次に、興味を覚えた点をいろいろと。

・あと残り1ページで完成という段になってから内容がどうも気に入らず、8時間で丸々新しい話に描きなおしたというエピソード。出来上がったのは「アヴィナの島」だが、そのボツになった元のお話も読んでみたかったなあ。大島優子演じる編集者・小田町はそれを読めたのだなあ。もしも現代にいる小田町が『BJ』を通読していたなら、それが本誌に掲載されていない話だと気付いただろうね。

・読み切りの依頼を受けて3つの案を開陳する手塚先生。その一、ピノコがお使いに行く話。その二、キリコが恋をするのだが、その相手が不治の病。その三、BJが復讐相手を見つけるが、末期がんの息子を治療するよう依頼されるというもの。本当にこの3案が手塚先生の口から出たのかどうかわからない(その一は本当かもしれない)が、その一は「ピノコ還る」、その三は「二人目がいた」に近い内容と思われる。そして……おいおいおいおい、何だって? キリコの恋ですとな!? うわあああああ! それ、読んでみたかったなあ! 手塚先生、キリコに恋をさせるつもりだったの?! もしそれが描かれていたら、キリコもBJに負けず劣らず悲恋の主人公になっていたかも。小田町くん(いや、実際には伊藤さんという編集者だったらしいが)、何故その話をチョイスしなかったんだ~。恨むぞ……。
 そして出来上がったのが3案のどれでもないBJが同窓会に出る話「虚像」だ。このとき写植のために下書きのコピーを取ったものが今も残っていて話題になったことがあったが、下書きの段階ではまだBJの苗字が空欄になっている。「間」という姓が誕生する直前の出来事だ。

・秋田書店に作品を持ち込んでくる漫画家の名前が「はざましろー(狭間士郎)」。BJの「はざまくろお」に引っ掛けたか?

以上、切りが無いのでここで終わる。このドラマはDVDに焼いて永久保存だ♪

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コメント

神様のベレー帽、録画しておいたものを今し方見てきました。結論から申しますと、私もDVDに焼くことにしました。・・・だって面白かったんだもの。(^^)

昨日、わかばさんのブログを拝見して、それじゃあ一丁草彅クンの手塚先生を見てみるか、と思いました。正直なところ、「僕にできるんだから、あなたにだってできます」という手塚先生の言葉は、その時点での私にとっては、天才がその才を謙遜しただけのものでしかありませんでした。神様にそんなこと言われてもなぁ、という感じです。(^^;)

でも、壁村編集長の口からその言葉が出たとき、不覚にも涙ぐんでしまいました。・・・ああ、こういう人がいたから手塚先生はブラックジャックを描けたんだ、と。(ToT)

決して手を抜かない、最後まで諦めない。その姿を誰よりもよく知っているこの人は、きっと誰よりも神様の影響を強く受けていたのでしょうね。だからこそ、その言葉が生きてくるような気がします。まぁ、この時点での小田町氏には通用しなかったみたいですが。(^^ゞ

「漫画家がマンガを書く時間を作るのが俺たちの仕事だ。あいつ信じて待つしかねぇだろ」てなセリフもシビレましたねぇ。「バカ野郎! 待てるわけねぇだろ!」と電話をたたき切ったあと、この人は絶対に印刷所を待たすだろうなー、と判ってしまうんですけど、そこがまた嬉しいところでもあります。(^^)

私にとってこのドラマの主役は、神様でも小田町氏でもなく、壁村編集長その人です。(^_^)v

PS なんだか草彅クンのハナが妙に大きく見えたんですけど、気のせいかなぁ。(^_-)

投稿: モトキ | 2013年9月28日 (土) 16時42分

モトキさん
コメントありがとうございます。お返事遅くなってすみませんッ! m(_ _;)m

モトキさんもご覧になったんですね^^b なかなか感動的で面白かったですよね♪

ドラマ放送後ネット上では、大島優子さんばかりが目立って手塚治虫や壁村編集長の影がかすんでしまったといったような意見も飛び交っていました。彼女自身の演技は良かったと思いますが、そういう見方をする人も多かったようです。確かにそういう点があったことは否めませんが、バイト感覚で言われたことだけやっていればいいと言ってはばからないようなキャラが見た「仕事人」の凄さ、を描くという手法は、悪くなかったと思います。ああいうキャラを創造したからこそ、「僕にできるんだから、あなたにだってできます」の一言が生きてきたのでしょうね。

そうですか、モトキさんは壁村編集長に感情移入してご覧になったのですね。当時落ち目になっていた手塚治虫の死に水を取るつもりで4回の連載を企画する男気にまずほろりとしますね。あの編集長だったからこそ、『ブラック・ジャック』は長期連載となって不朽の名作になったのでしょうし、「少年チャンピオン」の黄金期も築けたのだろうと思います。

佐藤浩市さんの壁村編集長はやはりとてもダンディだと感じました。『ブラックジャック創作秘話』原作で描かれる壁村編集長はもっとドスが効いていてヤクザな感じがします(笑)。是非原作も読んでみてくださいな♪ 

草彅クンの鼻、大きく見えましたか^^ 手塚先生が乗り移ったのかもしれませんねぇ^^b

投稿: わかば | 2013年9月30日 (月) 01時45分

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