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さらば、千鳥書房

ちょっと前からお店に貼り紙がしてあったが、松江殿町の老舗書店・千鳥書房さんが本日19時をもって閉店された(と思う)。きょうは最後にもう一度行こうかと思っていたのだが、悲しいので結局行かず。一昨日行って村上春樹を一冊買ったのが最後の買い物となった。

最初に行ったのはいつのことだったろう。私は小学生だったか、中学生だったか。まだ一畑百貨店が通りの東西に分かれる前の時代のことで、千鳥書房は西側にのみ入り口があってウナギの寝床のように奥が深かった。その一番奥のほうに文庫本が並んでいて、私が見るのは主にそこだった。私が持っている創元推理文庫はたいていそこで選んだものだ。書棚に見つからなかった坂口安吾の文庫本を取り寄せてもらったのも千鳥さんだった。その後、一畑百貨店の下に新装開店されて、南側からも入れる明るい雰囲気のお店になったと思う。

殿町をもうちょっと南へ行ったところにある今井書店ほど大きくはなかったが、私が読みたいと思う本はたいてい揃っていたし、スーパーで買い物をした後にちょっと寄ったりもできるので、好きな本屋さんだった。だから閉店はとても悲しい……。一昨日行ったときにレジでお店の方に「残念です」と声をかけたら、「これまでどうもありがとうございました」とお辞儀をされて、涙が出そうになった。いつもはお断りするブックカバーもかけていただいた。

学生時代からお世話になってきた本屋さんがまたひとつ無くなってしまった。天井までぎっしり詰まった本の圧迫感は、私にとってはとても心地よいものだった。ケータイやスマホで読む本からはそれは絶対に得られない宝物だった。そんな空間に居られた時間がなんと幸せな時間だったのかを、いま改めて気付いて噛みしめている。

千鳥書房さん、ありがとうございました。ここに素敵な本屋さんがあったことを、私は決して忘れません。長い間、お疲れ様でした。さようなら……。

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コメント

長い付き合いの書店が店仕舞い・・・。悲しい出来事なんですが、私からするとうらやましいという気持ちも捨てきれません。(^^ゞ

小学校、中学校を通じて2度、転居しました。その関係で、初めて文庫本を買った書店も、自転車で足繁く通った裏通りの本屋も、思い出の中にひっそりとたたずんでいます。

天井近くまである棚。狭い通路。紙とインクの匂い。店番をしているじいさんやばあさん。脚立を使って勝手に高いところの本を手に取る客。平台なのに背表紙を上にしてぎっしりと並べられたマンガ・・・。

いくつもの本屋から切り取られた様々なイメージが重なり合って、私の中で懐かしの本屋が組み立てられているようです。

今時々通っている大型書店は、そうしたイメージと対極にあるような気がしますね。空調が効いた、小綺麗で広い通路。本棚が客を圧迫することもなく、広い店内に大量の書籍が整理整頓されて並んでいます。

本と書籍。同じモノですけど、なんとなく昔の本屋にあったのが本で、今の書店にあるのは書籍、みたいな感覚もあります。色々な情報を得て、吟味した上で手に入れるのが書籍。本屋をブラブラ歩いて、出会うのが本。そんな風に、自分の中では区分けが出来そうです。(^^ゞ

投稿: モトキ | 2014年10月 8日 (水) 23時52分

モトキさん
コメントありがとうございます^^

大型書店と本屋さんとの違い、まさにおっしゃるとおりだと思います。さらに言えば、大型書店で売られているのは商品で、本屋さんで売っているのは一期一会の出会いと贅沢な時間だと思います。こういう感覚は、小奇麗なカフェと古ぼけた喫茶店との違いに感じるものと同じですね。

本屋さんも喫茶店も、私の好みに合うところがどんどんなくなっていくので、寂しい限りです。宝くじに当たったら、コーヒー一杯で文庫本一冊読めるくらい粘れる本屋兼喫茶店をやって、そこで居るんだか居ないんだかわからない女店主になろうと思っていますが、まだ当たりません(笑)。

投稿: わかば | 2014年10月11日 (土) 00時45分

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