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手塚治虫はやっぱりすごい!

NHK『日本人は何をめざしてきたのか 知の巨人たち 第8回 宇宙から生命を見つめて 手塚治虫』を観た。

先日観た吉本隆明や三島由紀夫の回では、彼らが当時の学生運動に果たした役割であるとか、自衛隊や安保に対する考え方であるとか、いわゆるその時代人としてどのように時代に影響されどのように時代に影響を及ぼしてきたのかということが語られていたが、今回の手塚治虫の回では、もっと大きくて普遍的な手塚の思想が語られていたように思う。

以下、うろ覚えだが内容を拾ってみる。

幼い頃から自然に親しみ、鎮守の森に行ってはぼーっと時を過ごしたり虫を採って図鑑を作ったりする。戦時中に学校で作った文集では、他の生徒が勇ましくて軍国少年的な文章を綴るのに対して、ひとり「蟻の貯水場」を書く。そんな少年は空襲で人間が壊れた人形のようにバラバラになって転がっている地獄を見、徴兵されなくてすむからと軍医を目指して阪大に入り、敗戦では悔しさ悲しさよりも自分が生き残れてこれから好きなことができるのだという喜びが大きく、天地神明に感謝した。

医大生と漫画家という二足の草鞋をはく多忙な生活は、教授の「君は医者になれば社会に害を及ぼす。漫画家になって子供の心を治しなさい」という言葉で、漫画家を目指すこととなり、戦前戦中の漫画とは一線を画す新しいセンスの作品を世に送り出すようになる。『新宝島』など。

『メトロポリス』では人工細胞で作られた人造人間ミッチーを描いて、科学の行き過ぎた発達はやがて人間を滅ぼすのではないかと憂え、TVアニメ『鉄腕アトム』では原作と異なりアトムが単なるヒーローに堕してしまったことを悔やむ。「アトムはすでにぼくの息子ではなかった」。最終回ではアトムはわが身を犠牲にして地球を救うが、悲劇というものを漫画に取り込んだのは手塚が最初だという。アニメ『西遊記』でもそういう要素を盛り込もうをしたのだが周りに反対されたらしい。

『ジャングル大帝』では命のあり方と生命の連続性を描き(「何代も何代も生命は繰り返されるが自然は変わらない」)、それは『火の鳥』でも同じ。『火の鳥 未来編』では、生き物の誕生と進化と滅亡を繰り返し見てきた火の鳥の、いつか生命を正しく使ってくれる賢い人間が生まれてくるのを願うというセリフが紹介されていた。

各漫画雑誌が奪い合う超売れっ子となり、トキワ荘の面々や若い漫画家たちの師ともなった手塚だが、世は劇画ブームとなり虫プロ倒産という冬の時代を迎える。もう手塚は時代遅れだ、終わったと言われたときに彼を復活させた作品は『ブラック・ジャック』。数回で終わりという予定が10年もの長期シリーズとなる(「医者はどこだ!」でのBJの鮮烈なデビュー、「300万ドル、ビタ一文まけませんぜ」という大塚明夫さんの声を聴いたときには震えましたぜ)。ヒューマンドラマにはしなかった。絶対的な正義などない。勧善懲悪なんか絶対に描かないと言った手塚は、単なるヒーローではなく自分のあり方に悩みながら生きるBJを描いたと……。

……あら? BJの登場に想像以上に舞い上がってしまったのか、その後の番組内容を覚えていない……(汗)。断片的に記憶に残っていることを挙げると……。

石ノ森章太郎の言葉。「(手塚は)どこかで人間を信用していない。影がある」

仏文学者の巖谷國士さんの言葉。「人間と他の動物、植物との間に境界がない」

手塚が病を得たときに会った松本零士の言葉。「タクシーの中ででも仕事をしていたほどの手塚先生が、いま何もしていないよ、と言ったときに、これは大変なことだと……。それが最後でした」

関係者の○○さんの言葉。「頼むから仕事をさせてくれ、というのが私が聞いた最後の言葉でした」

親交のあった梅原猛の言葉。「手塚さんは宇宙人」「手塚さんは預言者(予言者?)」

手塚治虫の言葉。「医学生の頃、担当だったがん患者が死んだ。それまでものすごく苦しんだのに、死んで顔がふっと安らかになった。そのときに思った。死んだ後に別の世界があるんじゃないかと。この世では50年、70年ほどの命だけれど、もっと長い命の塊みたいなものがあるんじゃないか。命というのはもっと宇宙的なものじゃないかと」

手塚治虫の言葉。「将来は地球を外から見る状況で子供が生まれてくる」「地球を外から見たとき、地球を大事にしなくちゃいけないと思うはず。そういう哲学が生まれてくることを期待したい」

うろ覚えの心のメモはここで終わり(汗)。

つくづく思った。手塚治虫はやっぱりデカい。絶対的な正邪も善悪もない。人間も他の動植物も何ら変わりない、一つの大きな生命体の欠片……。それはなんだか仏教の世界観と似ているような気がする。手塚は後年『ブッダ』を描いたくらいだから仏教の知識はあったと思うのだけれど、そういう世界観はおそらくごく初期の作品から断片的に見られてその後もずっとブレがないように思われる。

手塚は赤塚不二夫にこう言ったという。「良い映画を観て、良い小説を読んで、良い音楽を聴きなさい」。幼い頃から様々な芸術に触れてきた手塚は、特定の宗教ではなく一流の芸術に触れることによってそういう世界観に辿り着いたのかもしれない。天才にしか感じ取れないものを一流の芸術の中に見出していたのかもしれないと思う。

そしていま、天才ならぬ身の私は一流の手塚の作品からそういう世界観を受け取ることができる。連綿と続く生命と同じように、手塚の普遍的な世界観もずっと受け継がれて広まっていけばいいなと思う。そうすればきっと、美しい地球も人間の命もかけがえのないものだと、皆が気づけるに違いないから。

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コメント

お久しぶりです。20歳になったので「10代BJファン」改め「ぽちゃ」です。
私もこの番組見ましたが、明夫さんの声をきいてすべてがぶっ飛んだので(笑)このようなまとめを書いてくださってありがたいです。簡潔かつポイントをおさえたまとめ、さすがわかばさんです。
内容もさることながら、ちゃんと明夫さんを起用してくれた点を評価したい番組でした。
次は3月3日のTBS「林先生の痛快!生きざま大辞典」で手塚先生が取り上げられると公式サイトにありましたね!

投稿: 10代BJファン改め ぽちゃ | 2015年3月 2日 (月) 11時47分

ぽちゃさん
コメントありがとうございます。
お久しぶりですねぇ♪ そうですか、成人されたのですね。おめでとうございます♪
花の20代をどうぞ楽しく過ごしてくださいね^^

ぽちゃさんもこの番組をご覧になりましたか。なかなか見応えがありましたよね。
私のうろ覚えのまとめがお役に立つかどうか……(汗)。間違いがありましたらどうぞご指摘くださいね。
明夫さんの声は破壊力大きかったですね! 本当にすべてがぶっ飛びました(爆)。できることなら、これから何度でもぶっ飛んでみたいものです。明夫さんの声でまたアニメやってくれないかなあ……。
明夫さんご自身が「BJは自分の名刺代わり」とおっしゃっているくらいですから、ご本人も入れ込んでいらっしゃる役柄なのでしょう。アニメは民放だったのにNHKでも「BJ=明夫さん」のままなのは嬉しいですね♪
はい、3月3日。もう録画予約しました~(笑)。林先生もBJファンですから、きっと取り上げてくれることでしょう。楽しみですねぇ♪

投稿: わかば | 2015年3月 2日 (月) 23時17分

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