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言葉の海を渡る舟

『舟を編む』(三浦しをん著)読了。

『風の谷のナウシカ』や『64(ロクヨン)』の感想も書きたいのだが、どちらも超大作で、どこからどう手をつけてよいかわからないため、きょうは『舟を編む』の感想を。

文庫になったら絶対に買おうと思っていた作品である。書店で見かけたので早速購入、一気読みした。

---出版社の営業部員・馬締光也(まじめみつや)は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海(だいとかい)』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作---(カバー裏表紙より)

辞書編纂の話であるから、作中で特別に劇的な大事件が起きるわけでもなく、13年余の歳月を経て『大渡海』が完成するまでが軽いタッチで描かれている。だから、ページをめくらせる力はそのストーリーにあるのではなくて、馬締をはじめとする編集部員のキャラやその心の動きへの共感にある。

一種病的なまでに真面目で集中すると周りが一切見えなくなる馬締、一見どうしようもないチャラ男で自信家だが実は繊細で馬締に劣等感を抱く西岡、ファッション誌編集部から異動してきて辞書のことなどさっぱりわからない岸辺、生涯を辞書編纂に捧げ、そして『大渡海』完成直前にこの世を去った松本先生等々。それぞれが周りから浮いていると感じ、迷い、悩み、そして辞書編纂という仕事に打ち込むことで自分の生き方を見つけていく。5月頃に新入社員に読ませればいいんじゃないかと思うような雰囲気がある(笑)。

辞書編纂については、一語一語を限られた文字数で的確に説明することがいかに大変な作業かというのは察しがつくが、それ以外にもいろいろと裏側がわかって興味深かった。辞書に使う紙にはぬめり感がいるのだとか、なるほどなぁと思った。厚くてもダメだし、裏写りしてもダメ、ページをめくろうとして2枚いっぺんにめくれてしまってもいけない。その辞書にふさわしい紙を一から抄(す)く製紙会社にとっても社運を賭けるほどの一大プロジェクトなのだと知った。

また、辞書というのは何しろ完成までに時間がかかるシロモノだから、出版社の中でも金食い虫と言われて編纂の計画自体が頓挫しそうになることもあるようだ。昨年だったかNHKで女子大生が辞書編纂のお手伝いをするというドキュメンタリーをやっていたが、その中でも、電子辞書を作ればいいという会社上層部とあくまでも紙の辞書を作りたい編集部の意見の対立は切実だった。作中でも、なんとか辞書を作りたい編集部員たちの熱い思いが胸を打つ。

作中には、私が学生時代にお世話になった『日本国語大辞典 全20巻』についての言及もあった。なにしろそれぞれの語の初出例が載っているのだから、これはすごい辞書なのである。いったいどれほどの古典文献を読んであるのかと思うと、気が遠くなりそうだ。因みに私は20代の頃にこれの縮刷版全10巻を買った。また、刊行されるたびに『国歌大観』も買っていたので当時は万年金欠病だった。実際のところ、あまり使う機会はないのだが(笑)、良い辞書を持っているというのはただもうそれだけで幸せなことなのである。

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コメント

同感です。(^^ゞ

学生の頃、広辞苑が欲しかったですもんねー。・・・日本国語大辞典なんて、雲の上の存在でしたよー。(^^;)
 

投稿: モトキ | 2015年4月11日 (土) 22時50分

モトキさん

おっと、こっちはノーマークでした。レス遅くなりまして申し訳ありません(汗)

んっふっふ~。日本国語大辞典いいでしょ♪ 清水の舞台から飛び降りる感じでした。エイヤッ!
広辞苑も欲しかったですね~。私は冊子体では持っていません。枕にするにもちょっと高いですしね(をい!) いまはお手軽な電子辞書版を重宝してます♪

投稿: わかば | 2015年4月13日 (月) 23時44分

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