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2016年9月

『一の悲劇』

TVドラマ『一の悲劇』を観た。言われてみればこれまでテレビドラマで観たことのない探偵だったから、法月ファンとしてはこれは絶対に見逃せない(笑)。

法月綸太郎には長谷川博己、法月警視には奥田瑛二という配役。なかなかのイケメン父子♪ 発表当時に原作を読んだのだが(いま奥付を確認したら平成3年だった)、細かいところは忘れていた。しかし始まってすぐに犯人を思い出し(原作を読んでいるのも良し悪しだな……)、以降はそういう目でしか観られなかったけれども、まあまあの出来だったのではなかろうか。富田靖子の演技は怖かった。あれ? でも、タイトルの「一」の意味は解明されなかったね?

ハウダニットとフーダニットとホワイダニットが頃合いに散りばめられていて面白いが、こんな話が実際にあったら地獄だろうなとは思う(笑)。謎解きのための謎という印象が、この作家の場合は拭えないのだけれども、本家クイーンにもそういうところはあるのだから「本格」といわれる推理小説にはそれは仕方がないのかもしれない。

クイーンと言えば、法月家で飼われている猫に「クイーン」という名がつけられていたのは本家に対するオマージュだろうね。よく喋るお手伝いさん(渡辺えり)というのはドラマのオリジナルで、クイーン家でいえばジューナの役割だろうか。面白い役だけれど、あんまりこの人のキャラが立つと、法月父子の醸し出す二人だけの空気というのが台無しになりそうな気がする。もしシリーズ化されるのであれば、ちょっと考えていただきたいところだ。『誰彼』『頼子のために』は是非やって欲しい。でもそうしたら『一の悲劇』はその後だよなぁ……。うむ。

長谷川博己の綸太郎は原作のイメージを損ねていなかった(あの変なジェスチャーは要らなかったけど)。長身でツイードのジャケットも似合っていたし、欲を言えば本家クイーンに倣ってメガネ姿を見たかったかな(笑)。

久々に法月綸太郎を読みたくなった。とはいえ『ノックス・マシン』あたりになるともはや私の脳の許容量をはるかに超えるので、綸太郎シリーズで。法月父子がビールを飲みながら事件についてグダグダ語り合うような場面が読みたい(笑)。

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車たちも会話をしている(笑)

わが家の車をハスラーに換えてから1年ちょっと経った。割りと人気がある車らしく、ちょいちょい見かける。同じ嗜好の持ち主はどんな人だろうと運転者を見ると、あっちもこっちを見ていたりする。一瞬の連帯感が楽しい。

『ガソリン生活』(伊坂幸太郎著)読了。主人公は望月家の車、緑色のマツダ・デミオ。通称「緑デミ(みどでみ)」。とは言っても、そう呼んでいるのは人間ではなくて車たちである。

---のんきな兄・良夫と聡明な弟・亨がドライブ中に乗せた女優が翌日急死!パパラッチ、いじめ、恐喝など一家は更なる謎に巻き込まれ…!?車同士がおしゃべりする唯一無二の世界で繰り広げられる、仲良し家族の冒険譚!愛すべきオフビート長編ミステリー。---

人間以外の視点によって書かれた小説はいろいろあるだろうが(『吾輩は猫である』とか)、車が語る物語というのは初めてだ。彼らは排気ガスが届く範囲なら自由に会話ができるらしい。そして車輪のあるものなら電車でも自転車でもその声を聞くことができる(ただし、自転車は何を言っているのか意味はわからないらしい)。同様に、人間の言語も完璧に理解できる。車内で交わされる会話はしっかり聞いているのだが、こちらからは発信することができない、という状況であるらしい。

だから望月家の人間が巻き込まれる様々な出来事に関して、人間たちは知らないけれども緑デミは他の車から聞いて知っているというような(そしてそれを伝えることができないという)状況にしばしば陥る。また、車内の会話は聞けるけれども、車を降りてしまわれると聞こえなくなるということもある。読んでいるほうはやきもきしてしまうが、ちょうど良い頃合いに謎が散りばめられている感じになっていて、面白い。

ネタバレは避けるが、そういういろんな謎が最後に綺麗に収束し、且つ、いろんな心配事も解決するので、気持ちがほのぼのとする。そして、ラストの数ページ。帯の惹句にもあったが「車に泣かされたのは、生まれて初めてでした。」となる。車を愛おしいと思えるようなお話。お薦めです!

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