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『復活の日』

『復活の日』(小松左京著)読了。いやはや、物凄い話だった。以下、ネタバレありの感想。

---MM‐八八菌――実験では、摂氏五度で異常な増殖をみせ、感染後五時間で九十八%のハツカネズミが死滅!生物化学兵器として開発されたこの菌を搭載した小型機が冬のアルプス山中に墜落する。やがて春を迎え、爆発的な勢いで世界各地を襲い始めた菌の前に、人類はなすすべもなく滅亡する…南極に一万人たらずの人々を残して。人類滅亡の恐怖と、再生への模索という壮大なテーマを描き切る感動のドラマ。---(ハルキ文庫カバーより)

東西冷戦下の196X年、イギリス陸軍細菌戦研究所で試験中だった猛毒の新型ウイルス「MM-88」がスパイによって持ち出されたのが事の発端。そして終盤は南極以外に人類がいなくなった地球上で、米ソ両国のARS(自動報復装置)による核ミサイル合戦となるのだから、本書で小松左京が描きたかったテーマは戦争の悲惨さ、それをやめられない人間の愚かしさということであろう。しかしコロナが蔓延するこの時期にこの本を読むと、「MM-88」ウイルスが全世界を侵していく中盤の描写がゾッとするほど生々しく恐ろしいのである。

各国が、たいしたことはないだろう、風邪やインフルエンザの一種だろうとタカをくくっているうちに、人間が一人また一人とバタバタ倒れて死んでいく。運転している車の中で。歩いているときに道端で。ひとりぼっちの部屋の中で。傍らに誰かがいてほしいと願っても誰もいない。それぞれが孤独に死んでいく。病院には患者が詰めかけるが、根本的な治療ができるわけもなく、疲弊した医師が死ぬ。電車がどんどん空いていく。道端の死体を片付ける人もいなくなり……、やがて半年後には、人類は各国から派遣された南極観測隊の1万人を除いて全て死に絶える。

中で、誰一人として聞く者もいないラジオ講座で話し続ける教授が出てくる。非常に長い講義なのだが、つきつめれば「何故人間は生きているうちにもっと進歩できなかったのか」ということになろう。戦争すらなくすことができず、却って軍備を整えることで科学的に進歩してきたとは……。苦しい息の下から講義を続け、悔恨の想いを抱きながら教授は死ぬのだ。小松左京自身の思想は、まさにこの教授の講義に仮託されているように思う。

人類の未来は南極にいた1万人に託された。皮肉なことにミサイルの中性子のおかげでウイルスが無毒化するという現象が起こる。南極を脱出して南米に渡った1万人+南極で生まれた子供たちは、これからどんな世界を作っていくのだろう。どうか旧人類と同じ道は歩まないでくれと思わないではいられないラストであった。

さて、最後に……。コロナウイルスのパンデミックについて、いまアメリカやイギリスが中国を批判している。特にトランプ大統領はコロナウイルスは武漢の研究所から漏れたものではないかとまで言っている。細菌兵器として「MM-88」ウイルスを培養していたという設定の本書を読むと「もしかしたらそうかもしれない」とも思えてくるのである……。

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