カテゴリー「映画・テレビ」の記事

簡単に事の善し悪しを語るな

6月の『100分 de 名著』はアルベール・カミュの『ペスト』を取り上げていた。講師は中条省平氏で、第4回にはゲストとして内田樹氏も登場。内田氏の読者としては見逃せない回であった(だってテレビで拝見したことないんだもん)。

うん。内田氏は想像したとおりのお人だった(笑)。言葉の使い方がやっぱり秀逸で、熱を込めて語られる内容はカミュをよく知らない私も思わず納得してしまう説得力があった。

さて『ペスト』であるが、あらすじをNHKのホームページから引用してみる。
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舞台は、突如ペストの猛威にさらされた北アフリカの港湾都市オラン市。猖獗を極めるペストの蔓延で、次々と罪なき人々が命を失っていく。その一方でオラン市は感染拡大阻止のため外界から完全に遮断。医師リウーは、友人のタルーらとともにこの極限状況に立ち向かっていくが、あらゆる試みは挫折しペストの災禍は拡大の一途をたどる。後手に回り続ける行政の対応、厳しい状況から目をそらし現実逃避を続ける人々、増え続ける死者……。圧倒的な絶望状況の中、それでも人間の尊厳をかけて連帯し、それぞれの決意をもって闘い続ける人々。いったい彼らを支えたものとは何だったのか?
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ペストとは私たちの人生にたびたび訪れる「不条理」の隠喩である。内田氏はこの場合は特に第二次世界大戦時のナチスドイツのフランス占領のことであると説明された。望んだわけでもない状態に置かれたとき、人は何をよりどころとしてどう向き合うのか。カミュは様々な人々を登場させてそれを描いている。

結局のところ、「反抗」と「連帯」というのがカミュの描いたことがらの主眼だが、『ペスト』という作品は決して正義感だとかヒロイズムを賛美するものではない。神なき世界において、淡々と誠実に事に当たる人間の姿が何より美しい。

私は原作を読んでいないのだが、番組に取り上げられた登場人物の中ではタルーに共感を覚えた。タルーは聖者になりたいと思っている人間だ。そして彼は死刑についてこう語っている。「こうした死(死刑)は、誰も殺されることのない世界を作るために必要なのだと聞かされていた。そうした考えはある意味では真実だ。しかし、結局のところ、僕はその種の真実を信じ続けることができない人間なのかもしれない。確かなことは僕がためらっていたということだ」。

ペストは人間に不条理な死をもたらす。死刑も人間に死をもたらすことでは同じである。たとえそれが多くの人の安全にとって望ましいことであっても、だ。タルーは被害者の立場に立つ人間ではあるが、加害者を断罪しようとはしない人間だ。それは「赦し」云々の話ではなくて、彼が人を殺すことに「ためらい」を覚える人間であるからだ。

自分はどこまでを受け入れられてどこからが受け入れられなくなるのか、そのボーダーラインの決定に「ためらう」ことの大切さ、そしてその基準となるのが言葉では言い表せない身体感覚であることを内田氏が説いておられたのがおもしろかった。

物事の理非や善悪はそう簡単には決められない……。

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われても末に逢はむとぞ思ふ 『アンナチュラル』感想

ロスになるかと思っていたが、不思議とそれがない。あんなに綺麗に終わってくれたから満足感のほうが大きいのだろう。いや~、良かった! 最終回、印象に残ったシーンやセリフを挙げてみる。

・神倉所長の「お上におもねり、解剖結果を捻じ曲げるようなことは致しません!」「 職員一人に背負わせて、知らぬ存ぜぬはできません」のセリフには痺れた! 財務省などではなく、あんな上司がいる職場で働きたいものだ。

・砂時計のような形の容器に証拠のボールと硫酸を入れておく宍戸のクソ具合。と、二段仕掛けで宍戸に毒を盛る中堂さんのクソ具…(以下省略)。

・ミコトが中堂さんに言った言葉。「戦うなら法医学者として戦ってください!」「不条理な事件に巻き込まれた人間が、自分の人生を手放して、同じように不条理なことをしてしまったら、負けなんじゃないんですか!」

・ルンルンスキップの木林さん。「私を何だと思ってるんです?」

・毛利「ここはサバンナか?」 向島「東京ですよ」

・坂本「クソ頑張ろう!」

等々、挙げればキリがないのだが、圧巻は高瀬の裁判シーンだ。
ミコトが高瀬に放った言葉「犯人の気持ちなんて分かりはしないし、貴方のことを理解する必要なんてない。不幸な生い立ちなんて興味はないし、動機だってどうだっていい!」 。
この後、ミコトは煽りに煽って高瀬の自供を引き出していく。高瀬のDNAという法医学的事実があるのだから自供がなくてももう詰みも同然だが、さらに心理戦で追い詰めていくのだ。ここをちょっと掘り下げてみたい。

最初、烏田検事が「つまり被告人は自分が受けた虐待と同じことを被害者に行い殺害することで、亡き母親への恨みを晴らそうとした」と言ったとき、高瀬は「テンプレですね。何もわかっちゃいない」と一笑に付した。その高瀬のスイッチが入ったのはミコトの上記の言葉に続く「ただ同情はしてしまいます。このかわいそうな被告人に」と言った時点である。「同情」と「かわいそう」、この二つのキーワードとミコトのわざとらしい表情しぐさが起爆剤だった。「被告人は今もなお、死んだ母親の幻影に苦しめられています」「誰も彼を救えなかった、あなたも自分自身を救えなかった。あなたの孤独に心から同情します」。深々と頭を下げるミコト。

ここに至って高瀬は自供する。「やりたくてやった」「母親は関係ない!」「26人。誰も真似できない。俺はやりとげた!」「俺はかわいそうじゃない!」。逆上してまくしたてる高瀬……。

口先ばかりの「同情」だの「かわいそう」だのが、心に傷を負った者に対してどんなに失礼でトンチンカンで、我を忘れるほど怒りを覚えさせるものであるかがわかる。

視聴者はここで留飲を下げることになったのであるが、実はここで(やった!)とばかりにわずかな微笑みを浮かべるミコトに、私は若干の違和感を覚えないでもなかった。母親に対してわだかまりを持ち続けていたことに関しては、ミコトも高瀬と同じである。高瀬の思いを誰よりもよく理解できるのはミコトであったはず。ならば、このシーンでは、自供を引き出したことを喜ぶよりは、激昂して(自分は母親の影に苦しめられてなんかいない!)と虚勢を張る高瀬に対して、初めての心からの同情と憐みを覚えるはずではないかと、私は感じたのだ。

いや、わかる。わかるよ。ミコトは母親に対するわだかまりを乗り越えたのだと。この微笑みは、母親の暴力に負けないという宣言だったのだと。でもなんとなくモヤモヤしてしまう私のような人間もいるのだから、ここはもうちょっと時間をかけて丁寧に描いてほしかったなと思う。これでミコトの過去も綺麗に精算できたのかと考えると、ちょっとばかり消化不良な気もするのである。(もしかして、シーズン2への伏線ですか?笑)

まあこの件に関してはもうちょっとモヤモヤするだろうと思うが、きょうはまだ興奮冷めやらぬ状態なので、一応ここまで。

最後に、様々なところにちりばめられた伏線の回収が素晴らしかった点について。これはもう書き出すとキリがないのだが、夕希子さんの「口」が語った真実、これが一番のトリックであり衝撃だった。これで中堂さんも救われたんじゃないかな。

素晴らしいドラマをありがとう。UDIのメンバーに再会できる日を楽しみにしています♪
(タイトルは井浦さんが『平清盛』で演じた崇徳院にひっかけてみました)

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『アンナチュラル』が終わった……

はう~~.。o○

みんなよかったよぉ~~。みんなカッコよかったよぉ~~。クソはめっちゃクソだったよぉ~。
しかし、このドラマは神がかっていたネ。
いまこの時期に、鑑定書の改竄というテーマを盛り込むなんてね。
1話から最終話まで、テーマは全部タイムリーだった。
そして、1話から最終話までのどこかに出てきた伏線が綺麗に回収されたことに驚愕!
「アメリカはいいよね~、土葬だもん」がここで生きるとは!
すごい脚本だったよぉ~~。
この一週間というもの、ネットでは誰が真犯人かで盛り上がっていた。
木林説や、中には東海林説まであった(笑)。
しかしこのドラマの本質的テーマは「生きる」ことだった。
ピンクのカバはたとえ一匹になっても、生きていくんだ!
はう~~.。o○
終わっちゃったか……。いいドラマだったなぁ。
シーズン2を切望します!!!
ちょっとまだとりとめのないことしか言えないので、とりあえずここまで。

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テレビ前で待機中

『アンナチュラル』最終回開始まであと15分!

どうすればいいんだ!
観るのか!
観ればいいのか!

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『アンナチュラル』にハマる

久々に凄いドラマに出会った。TBS金曜夜10時『アンナチュラル』。2月中は平昌オリンピックも観ないでリアルタイムでこのドラマを観て、さらに録画を繰り返し観ていた。3月になってもハマりまくり状態。あと2回で終わってしまうのがなんとも寂しい。

舞台となるUDIラボの面々がそれぞれ個性的で魅力的なのはもちろんだが、何よりそのストーリーが面白い。面白いと言うと軽すぎるきらいがあるのだけれども、登場人物が抱える過去の重さ、現代社会の問題を深くえぐる展開、最後には必ず泣いてしまう感動、それらすべてをひっくるめて、面白いとしか言いようがない。圧倒的なスピードで進んでいくストーリーに引き込まれて、あっという間に一話完結の一回分が終わる。でも2時間の映画一本を観たくらいの満足感が残る。そしてすぐに録画をチェック。もう延々とエンドレス『アンナチュラル』(笑)。

8話まで進んできたが、たいていの回で「こうなるだろうな」と予想した展開になっていない。決着のつけ方が凡百のドラマとは異なるのだ。脚本が良い。たとえば第7話「殺人遊戯」。クラスメートにいじめられていた高校生が、同じくいじめられていた友人を助けることができず死なせてしまう。彼は、いじめていたクラスメートの名前をネットの実況という方法の遺書で公表した上で自分も死のうとするのだが、そのときミコトが言い放つ。

「あなたが死んで何になるの。あなたを苦しめた人の名前を遺書に残して、それが何? 彼らはきっと転校して名前を変えて新しい人生を生きていくの。あなたの人生を奪ったことなんてすっかり忘れて生きていくの。あなたが命を差し出しても、あなたの痛みは決して彼らに届かない。それでも死ぬの? あなたの人生はあなたのものだよ」

ふつうなら「早まってはいけない」とか「命を粗末にするな」とか「お父さんお母さんが悲しむぞ」とか言いそうなところだが、このドラマではそういう安直な言い方はしない。自分が生きていける方法を自分で探して生きていけ、と言う。

第8話でも、自分が「帰る場所」を失ってしまったのなら、その「帰る場所」を胸がはりさけるほどの思いで恋い焦がれながらも、新しい「帰る場所」を作ればよいのだ、と言う。

そういう、未来への希望につながる何かを思い起こさせてくれるから、ドラマの終わり頃には温かい涙が滂沱として流れるのだ(ゴミ屋敷の屋敷さんが奥さんの骨壺を触るシーンとロクローの涙で、私の涙腺は決壊した。主題歌の「Lemon」が流れるタイミングがまた絶妙すぎる……)。

あと2回。中堂さんの恋人を殺したのはだれか? 復讐劇はどうなるのか? 楽しみでならない♪ ……ん~、まだまだ書きたいことはいっぱいあるのだが、長くなりそうなので、このへんでやめておく(笑)。

因みに、ロクロー役の窪田正孝と中堂役の井浦新は共にNHK大河『平清盛』のときに「お?♪」と思った役者さん。『アンナチュラル』で一緒に観られるのがうれしい。

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絶賛風邪ひき中

先週、相方がインフルB型と診断され、しばらく商売を休むように言われ、あらあらと思っていたら、私も突然39度5分の発熱。症状としてはA型っぽいが、相方経由で伝染したとすればB型なのかも。いまさら医者にかかるのも面倒くさく、ひたすら逼塞して養生に勤しんでいる。37度台までは下がったが、たまに体の深いところから出る咳と腰などに関節痛があり、完治まではまだしばらくかかりそう。

で、トロトロとまどろみながら、録画しておいたドラマなど観る。『アンナチュラル』が面白い♪ 死因不明の死を扱う硬派のドラマだが、UDIラボの面々の個性が生き生きと描かれていて重くなっていない。脚本が上手いのだろうと思う。第3回では妻を殺害したかもしれない男の容疑を、ありとあらゆる可能性を調べることで見事に晴らしていた。謎解きが心地よく、今後の展開が楽しみである。

「ん?」と気づいたのが窪田正孝演ずる医学生の名前。「久部六郎(くべ・ろくろう)」とな?! 手塚キャラの「間久部緑郎(まくべ・ろくろう)」とそっくりではないか。ありふれた苗字でも名前でもないのにここまで似ているというのは、偶然とは言えないような気がする。脚本家さん、ロックのファンなのかもしれないね♪

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今夏、観ているドラマ

今夏、観ているドラマ。『ごめん、愛してる』『過保護のカホコ』『ハロー張りネズミ』の3本。

『ごめん、愛してる』は韓流ドラマの焼き直しらしいが、韓流ドラマなんぞ一度も観たことがないから、これでもかというくらいのあざとさとご都合主義は却って新鮮(笑)。ただ長瀬の色気が見たくて観ている。

いちばん注目しているのが『過保護のカホコ』。カホコとその両親(正高と泉)、両親の実家の人々、カホコが好きになった青年、それぞれの人物の性格が極端にカリカチュアライズされて描かれている。自分の知っている誰かに似ているんだよね~、と話しながら観ていたら、夫が「あんたはカホコに似ている」と言った。はぁあ~~?! そんなふうに見られていたのかと愕然としたので、お返しに「あんたは正高の妹に似ている」と言ったら、黙った。^m^

『ハロー張りネズミ』は、ながら見なのでさしたる感想はない。ただ、最近のドラマは結構アクションというか暴力シーンが派手になってきたように思う。瑛太さんの役としては、『まほろ駅前多田便利軒』のほうが好き。

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『一の悲劇』

TVドラマ『一の悲劇』を観た。言われてみればこれまでテレビドラマで観たことのない探偵だったから、法月ファンとしてはこれは絶対に見逃せない(笑)。

法月綸太郎には長谷川博己、法月警視には奥田瑛二という配役。なかなかのイケメン父子♪ 発表当時に原作を読んだのだが(いま奥付を確認したら平成3年だった)、細かいところは忘れていた。しかし始まってすぐに犯人を思い出し(原作を読んでいるのも良し悪しだな……)、以降はそういう目でしか観られなかったけれども、まあまあの出来だったのではなかろうか。富田靖子の演技は怖かった。あれ? でも、タイトルの「一」の意味は解明されなかったね?

ハウダニットとフーダニットとホワイダニットが頃合いに散りばめられていて面白いが、こんな話が実際にあったら地獄だろうなとは思う(笑)。謎解きのための謎という印象が、この作家の場合は拭えないのだけれども、本家クイーンにもそういうところはあるのだから「本格」といわれる推理小説にはそれは仕方がないのかもしれない。

クイーンと言えば、法月家で飼われている猫に「クイーン」という名がつけられていたのは本家に対するオマージュだろうね。よく喋るお手伝いさん(渡辺えり)というのはドラマのオリジナルで、クイーン家でいえばジューナの役割だろうか。面白い役だけれど、あんまりこの人のキャラが立つと、法月父子の醸し出す二人だけの空気というのが台無しになりそうな気がする。もしシリーズ化されるのであれば、ちょっと考えていただきたいところだ。『誰彼』『頼子のために』は是非やって欲しい。でもそうしたら『一の悲劇』はその後だよなぁ……。うむ。

長谷川博己の綸太郎は原作のイメージを損ねていなかった(あの変なジェスチャーは要らなかったけど)。長身でツイードのジャケットも似合っていたし、欲を言えば本家クイーンに倣ってメガネ姿を見たかったかな(笑)。

久々に法月綸太郎を読みたくなった。とはいえ『ノックス・マシン』あたりになるともはや私の脳の許容量をはるかに超えるので、綸太郎シリーズで。法月父子がビールを飲みながら事件についてグダグダ語り合うような場面が読みたい(笑)。

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『フラジャイル』が終わってしまった○| ̄|_

昨晩でフジテレビのドラマ『フラジャイル』が終了。もう10回もやったのかと思うくらい、早く終わってしまった気がする。それくらい面白かったということだろう。もう観られないかと思うと残念だ。フラジャイルロスになりそうだ(泣)。以下、簡単に感想を。

まず配役から。敬称略。ドラマが始まる前に書いた記事では、宮崎役の武井咲がちょっとイメージと違うと書いたが、案に相違して彼女はとても良かった。あまり好きな女優さんではなかったのだが(ごめん)、ちょこまかアタフタしているこの役で好感度がアップした。

逆に、原作から受けるイメージと違っていたのが長瀬智也演ずるところの主役・岸先生。原作の岸京一郎という男はもっと無機質でドライだ。対して長瀬の岸先生にはどこか陰があってどうかすると悲しげな眼差しをしたりする。「患者のことを考えすぎだ」と宮崎を叱る割には、自分がいちばん患者のことを考えていそうな人間味あふれるところがあった。だが、ドラマとしてはこっちのほうが面白い。この線でシーズン2を作ってくれないかな♪ あのカッコいい長瀬をもう一度観たい!

細木先生役の小雪と、中熊教授役の北大路欣也の安定感は抜群。この二人が出てくると難しい局面もなんとかなりそうに思えた。

森井役の野村周平。悩める検査技師、製薬会社のMRに「ちょろい」と言われる青年(笑)の役を好演していた。最終回は、岸と森井は両想い?と思わず腐女子思考になってしまいそうな筋書きで楽しめた(原作では森井くんは病理を辞めたりしていない)。

アミノ製薬MR火箱役の松井玲奈。小悪魔の面から脆い面まで出す役で難しかっただろうと思うが、上手く演じていたと思う。結局、火箱ちゃんて憎めないキャラなんだよね。私も決して嫌いではない。

また、原作にはない役の佐田部長(津田寛治)も良かった。ああいうコミカルな人がいるから余計にシリアスな場面が際立つのだろう。

次にストーリー展開。原作とはエピソードの順番が違うが、諸々の要素を効果的に取り入れてあった。森井くんが他の病院に移ることも付け加えられた話だが、うまくつながっていたと思う。彼が病理に帰ってくることになって、最終回がより劇的になった。

印象に残った患者は第5話の保育士さん(安田章大)。命の大切さに気付かぬままどこか虚ろに最期のときを迎えようとしていたが、森井の懸命さに打たれ、岸の「いま、生きてる」の一言に、自分が生きている尊さの実感を初めて得る。それからは、やりたかったこと(『疾走』という曲を書く)をやり遂げ、一つの命を救って、散っていく。原作の中でも忘れることのできないエピソードを、ドラマはほぼ完ぺきに再現してくれていた。安田くんの芝居もよかったし、ボロ泣きした(´;ω;`)。

それから最終2話に出た松田さん(小出恵介)。原作では緩和ケアの稲垣先生の友人・竹田だが、ドラマでは宮崎の幼馴染という役どころ。膵臓がんでもはや手の施しようがなく、新薬の治験にすがるしかない絶望的な状況。しかし最後まで生きることを諦めず、またその優しい人柄は火箱の心をも動かし、アミノ製薬の良からぬ企てを阻止する力ともなった。これも涙なくしては観られないエピソードだった。

医師では放射線科の高柴先生(志賀廣太郎)と、緩和ケアの稲垣先生(平山祐介)が私のお気に入り♪ 岸先生、毒舌の変人だけど、シンパはけっこういるのである。

あと、ドラマではいろんなところにお遊びの要素があって、それを見つけるのも面白かった。宮崎先生の机の周りに小さなひよこがいて、それが回を追うごとにどんどん増えていくとか、岸と中熊がラーメンを食べている屋台の貼り紙(「この麺を食っていけ その箸で食っていけ」だったかな?)とか、焼酎のラベルが「宙船」だとか。岸が見ている標本の患者名が「大河内渉」だとか。原作単行本にはオマケの4コマというお楽しみがあるが、ドラマにもそれなりのお楽しみがあったのは嬉しかった。最終回ラストには第1話に出てきたサットン先生がまたまたバカ呼ばわりされていたのも可笑しかった。これで最終回からまた第1話に繋がるという構成になるわけだ。\(^o^)/

あとは……。そうそう、視聴率! 裏番組の日本テレビ『ヒガンバナ』と「水10」対決ということで接戦を繰り広げてきたが、最終的には『フラジャイル』が勝ったそうだ(フラジャイル平均9.76%、ヒガンバナ平均9.62%)。それにしても、ネットで検索するとフジテレビに否定的な記事が多いのにビックリする。局によってそんなにドラマの作り方に差があるのかしらねぇ。┐(´ー`)┌

また、ネットで検索して知ったのだが、岸役に最初は嵐の松本潤の名前が挙がっていたのだそうだ。本当かウソか知らないが、松潤には似合わなかったと思う。若すぎるし。クロコーチなんかをやってきた長瀬だからこその、この視聴率だと思う。

『フラジャイル』、原作はまだまだ続いている。病院という組織の不条理、薬を巡る問題等、医療をえぐる作品だ。またドラマでは「僕の言葉は絶対だ!」を連呼して(原作では一回しか言ってないんじゃないかな?)100%の仕事をすることを自身に課すシビアな姿勢も強調されていた。病院が信じられなくなりそう……という副作用はあるが(笑)、なかなか見どころの多い作品である。興味のある方は是非ご一読を!

(ところで、私は、細木先生が口にした「戸倉さん」というのが気になって仕方がありません。岸先生とワケありの女性っぽいニュアンスだったのですが……。元カノかな? 元奥さんとか? 岸先生の女性関係なんて想像できませんが、あのBJにも彼女がいたくらいだからな~笑)

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『フラジャイル』感想

あらら、『フラジャイル』初回の感想も書けないうちに既に2回目も終わってしまった(汗)。とりあえずここまでの感想を書いておく。

岸先生の「僕の言葉は絶対だ!」のセリフがいやに連呼される番宣に辟易するものの、ドラマ自体は妙な脚色もなく良い出来に仕上がっていると思う。

初回、岸が「癌だ。どこの癌なのかもっと検査をしろ!」と言うのに「肺炎だ」と言って譲らない担当医の憎たらしさと言ったらもう……(笑)。あんな医者って本当にいるのだろうか。逆にものすごく勇気がある医者にも思えるのだが(笑)。しかし知らずに当たってしまった患者にとっては災難だなぁ……。腹部に大きな癌があるであろうことを突き止めた岸が内科のカンファに殴りこむシーンでは、担当医を完膚なきまでに言い負かしてスカッとする。だが、担当医の落胆のしかたと悔しがり様を観て、他の医師たちの前でここまでしなくてもと、なんだか公開処刑を観ているような気にもなった。原作では岸は担当医に電話で結果を伝えているだけである。先般の記事にも書いたが、最近のドラマはこの手のシチュエーションが多すぎる。

で、毎回このパターンだと嫌だなと思いながら視聴した第2話。救命救急センターに搬送された時計屋の主人。そこでは急性アルコール中毒と診断されたが、実はメチルアルコールとアトロピン点眼薬による複合中毒であることを、岸と宮崎が聞き取りと実地調査で突き止める。救命救急のカンファに赴いた岸は、火中の栗を拾うという感じで、孤立無援で集中砲火を浴びながら「30秒間患者の言うことに耳目を傾けろ」と意見する。いくら救命救急部門が忙しいと言っても、「患者や家族の話を10秒しか聞かず最初の診断が6割しか当たらない分際で医者を名乗るな」「6割の医者に自分の家族を任せられるのか」と手厳しい。「病理は10割(正解を)出す」と豪語するシーンはまさに岸の独壇場であった。岸の言葉はどれくらい救命救急医の胸に響いたか。後のシーンでは、相変わらず人の話を聞かず慌しく急性虫垂炎(だったかな)だと断定する医師の横で、「旦那さんですか。詳しい話を聞かせてください」という医師(時計屋さんの担当医だった)が現れる。良かったなぁとホッとする結末だった。

2回までで岸の日常と仕事ぶりが描かれたところで、次回からはいよいよアミノ製薬の火箱が登場するようで楽しみである。検査技師の森井くんに色仕掛けで迫ってみたり(薬屋さんてそこまでするの?!)、目指すところは正しいと思わないでもないけれども途中がとんでもなく間違っているという印象のアブナイ女性だ(笑)。臨床実験の新薬にすがるしか道のない患者さんの実態がどんなふうに描かれるのかという点にも注目して観てみたい。

オマケの感想
岸が暴走するのを「庇いきれなくなるぞ」と心配する中熊教授と「頼んでないです」と嘯く岸。『BJ』で「人体を侮っているといつかしっぺ返しをくらうぞ」とBJを諭す山田野先生(『針』)を思い出してキュン♥

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